バビロン・バイ・トレイン
がく紫陽花の紫や夾竹桃の紫が、どんよりした梅雨空に艶かしく咲いていた。
そんな夢を見た。
あれは名鉄三河線、若林駅だった。
ボクのやはりどんよりとした過去の思い出の中でも、あの日(それはちょうど今頃なんだけれど)のことはかなりハッキリした輪郭を保ったまま、3年とか4年のなんとも中途半端な月日の断層の中に直立している。
トヨタの街が悲しいということを、その紫陽花や夾竹桃を見た時にハッキリと感じたのだけれど、田園風景の中に無機質な工場が、不自然に、というよりも、不規則に点在しているからだろう、と、その時に考えていた。
原風景(たとえば遠く故郷の風景にも似ている)どこにでもある日本の風景の中に、あの異形の、灰色の、芸術とか美とかとはほとんどなんの接点もない、人の感情のらち外にある工場群が立ち並ぶ。
そして、その工場を中心点として拡がるトヨタの街は、あの保見や三好が丘という少し前までは工場とは無関係だった場所に沈黙の街を形造る。そこは灰色の工場の街とは少し違っていて、キレイに区画整理された、モザイクの街…。
不自然な構造が人の心を不安定にする。
田中和風寮がそうだ。
公園がそうだ。
図書館がそうだ。
豊田スタジアムがそうだ。
大橋がそうだ。
伊勢湾岸道路がそうだ。
そしてトヨタの工場群がそうだ。
溶け込めないでいる人工物。
溶け込めないでいる人たち。
風景の二極化。
住民の二極化。
それらが、実は、微妙なバランスで田園風景の中で新しい価値を構築していこうとする。
あるいはバビロン。
自然がその異形の造形物の歪さを抽出する。
あの街が、たとえば大都会の中にあったとしたら、たとえば工場の街にあったとしたら、それほどの違和感をボクは持たなかったのだろう。
たとえば空中に浮かんでいたとしたら、たとえば海上を漂流していたとしたら、たとえばあの森(ホーソンの森なんだけれど)にあったとしたら…。
若林駅のがく紫陽花や夾竹桃の花は、きっと、今年も咲いていて、知立からやってくる多くの期間従業員の、そして土橋から去って行く多くの期間従業員の、記憶のどこかに(それはほとんど記憶装置と言ってもいいような機械仕掛けのように)やはり直立して突き刺さっているのだろうと、ボクは、思っているのだよ。
もう、あの寂れた悲しみの駅には人の姿はなくて、それでも時計だけは規則正しく動いている。
>まことさんへ
ありがとうございます。
リストラ、ま、ボクも似たようなもんで、それから4年前に初めてトヨタの期間工として働くようになりました。
やめる前にトヨタのこと知っていたので、それが背中を押したようでもあるのですが…。そう言う意味では、期間工ってのは、良いような悪いような、です。
秋葉原の事件は、やはりみんなで考えなければならない問題だと思っています。
>考え中さんへ
記事にしてみました。
えっと、ま、おっしゃる通りだと思います。
1つの価値ってのは、トヨタ至上主義みたいなものなんでしょうが…。ま、この国が近代化するうえで、あるいはどの集団でも、近代化する途上では同じような価値の統率は行われるのだろうと思います。
西洋化、とかもそのひとつだろうし、戦争もそのひとつだろうし、それはかなりの部分で、自らというよりも、誘導されたり強制されたりする、ってことなんでしょうが…。
>芋洗坂係長
よくホンダと比較されるのですが、ホンダは鈴鹿市側からの変更を丁重に断ったそうですよね。そのあたりの謙虚さみたいなものがホンダスピリッツと重ねて語られたりしますし、ボクもそのあたりがトヨタと違う企業風土だと思っています。
ま、街の感じは近いものが工場の街にはあるかもしれませんね。どうしても集約化しようとするし、それがコストダウンだったりしますしね。
ホンダは、製作所単位で地方にもあるし…。トヨタほど集約化していないように思うのですが。
>ぐるりんさんへ
昔と言っても15年前の話ですよね。トヨタも二人部屋とかが93年あたりまであったようですし。
個室にしたっていっても一部はふすまですから、これも、ま、詐欺みたいなもんで…。
「芋洗坂係長」さんのお話を聞いて私も思い出しました。
ホンダ埼玉を受けに行ったときですが、今は昔と違い、若い人がいやがるので寮は1人部屋になっているそうです。でも、鈴鹿の方とかはちょっと分からないです。
ああ、埼玉に住みたいなー。
ふ~、、、ある意味、鈴鹿市も似てる部分があるかもですねぇ。
近鉄白子駅で降りるとホンダの街。
違和感の隠せない、HONDA車のタクシー。
ホンダ鈴鹿工場と、その外注の下請け工場の街でしたね。
もう、かれこれ20年くらい前のイメージですが・・・。
二人しか鍵を持っていない部屋で貴重品がなくなる。
相手に聞いても「知らねぇ」で終わっちゃう。
大浴場に浮かぶ、茶色の物体。 疲れて帰っても風呂にも入れず、汗をシャワーで流して帰るだけ。
娯楽と言っても大した遊び場もなく、精々カネボウの紡績工場で働く女の子をナンパして遊ぶくらいしか・・・。
でもまぁ、そんな期間工でも、レースをやりたくて来る人がいました。 私の友人も、レースがしたいからってことで、娯楽がないのも、街が異様なのも気にしてなかったようですが。
古い話です。 失礼しました。
メールした人です。(^u^)
わざわざ取り上げていただいて、恐縮です。
豊田市は「嫌い」なのが正常な反応だと思いますよ、せいぜい
「どちらでもない」、「好き」って理由があれば聞いてみたい。w
中日新聞によると
【豊田市】1937年にトヨタが旧挙母(ころも)町に本社工場を建設。
59年に「挙母市」から全国で初めて企業名を地名とする「豊田市」に。
トヨタの主力7工場をはじめ、関連の約390工場が立地。家族を含め、
住民の7割近くが自動車産業と関連を持つ。人口約42万人。外国人登録
者が約1万6000人。
バチカンやモナコの様な特別区ですから。
しかも元からの民族や文化は駆逐されて、全国から集められた、
移民の街です。
今はソノ2世3世も、育っている訳で。
寂しさは、他の移民の街にも存在するけど。
1つの価値観に統率された不自然さは、この街特有の物ですね。
はじめまして
偶然に見かけたこのブログを読んで涙が溢れて来ました。
記事の数が多くてまだ全部は読んでないですが20程見ました。
自分自身はリストラされてから職場を転々とし人生をさまよってます。
淡々と書かれてますが胸に来ます
秋葉原の事件も残念ではありますが、心の叫びは自分も同じようなものなのかもしれません。
もちろん事件は許されないことではあります。
>Mさんへ
郊外のほうにはトヨタの工場の街ではなくて、トヨタの住宅街が出現して、それはそれで経済とかいう人の感情とは関係ない部分にはとてもいいことなのだろうけれど…。
なにか違和感があるのですよ。豊田市街地ではなくて、緑の多かった場所に、山奥に突然超高級マンションが出現する。トヨタ住宅だったりすると、ね。
薄いだしのうどん、そうだなあ、電車で2時間、京都とか大阪とか…。
>テツさんへ
ええ、最近の写真は渥美線新豊橋駅(もう廃駅になりましたが)のものです。
今日のもそうですよ。
開発がすすんでいるようですね。
>さといもさんへ
豊田市街地はそれでも納得する、というか、それほどの違和感はないのですが、山の中に突然出現する高級高層マンションやトヨタ自動車の寮なんてのは、ちょいと驚きました。
そうそう、あの元町工場の近くのマンション街なんてのもなんか要塞のようでもあるし…。
そうですね、刈谷とか、ま、岡崎なんてのは、全然違いますもんね。
それに一番感じたのは、通勤バスから見える田圃とか…。田中から高岡工場、ま、三好工場付近もですが、田圃の稲の育ち具合を毎日見ながらでしたし…。
住民の…もあるかもしれませんね。特に田原とか豊橋なんてのはそれを感じました。
私も何度か書きましたけど豊田市は人口の割りには栄えてない都市です。
企業主体で大きくなった街だからどうしても人工的な作りになってしまうのですよ。
市民というより会社にとってムダと思われるものは作らない、あるいは排除する街ではないでしょうか。
豊田市の隣の刈谷市には豊田自動織機、デンソー、トヨタ車体の本社がありますが
豊田市ほど会社の色には染まってない感じがします。
ここは住民の気質もあるのかもしれません。
はじめまして。
最後の写真は、渥美線でしょうか?
溶け込めないでストレスたまっています。
引っ越したい。
・・そういう人たちがうらやましい反面・自分は背伸びしてるので田舎に引きこもりたくて・・・。
自分の好きな街に行きたいです。
・・京都とか。
・・神戸とか。
東海地区は嫌です。
関西に帰りたい。
・・薄いおだしのうどんがいい。
たねぼうさん、こんばんは。
実は豊田市在住の人からメールを頂きまして、ボクがどうも「豊田市嫌い」と思われているようでしたので、その原因みたいなものを書いてみようと昨日思ったのです。
田原市もトヨタの街なのですが、全然違うのですよ。持つ雰囲気ってのがね。豊田はトヨタの匂いがきつ過ぎるようでもあるし。
それに異様ですよね。あの郊外のトヨタ社員住宅や社宅、マンションとか…。
豊田の事件、もうひと月過ぎてしまいましたね。
いろいろな人が住んでいて、田圃や森や川や公園なんて多くて…、ま、そんな嫌な感じはしますよね。
深い・・・深いですね。
豊田市全体の空気を読んでいるが如くの文才能力と表現力。
管理人さんには頭が下がります。
この前 "スーパーモーニング" という番組で
あの豊田市で起きた事件の特集がありました。
全く手掛かりが無いみたいですね。もうこのまま
迷宮入りするのではないかと思いました。
なんか管理人さんの思っていることがあの事件のことに
なんとなく反映してるなんて思ったりします・・・・・
なんかうまいこと言えませんが。