タクシーの新しい運賃、料金制度がはじまりました

昨日、令和2年11月30日付で自動車交通局長から「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について」の通達が発出されて、タクシーによる一括定額運賃(定期回数券)、変動迎車料金が認められることになりました。

一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について

これは、平成28年10月12日にハイタク連合会で決定された「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」の11項目に入っていました。そして令和元年度中にルールの整備を図るとし、平成30年10月から実証実験が行われていました。

定額運賃と変動迎車料金

タクシー業界において今後新たに取り組む事項について

定額(乗り放題)タクシー
タクシー業界において今後新たに取り組む事項について

20201116_第61回公共料金等専門調査会_資料1 タクシーの進化に向けた取組み等

変動迎車料金・定額タクシー実証実験

そして今回の改正になりましたが、どのように制度が変わったか、通達の内容からちょっと考えてみます。まずは、「定期券/回数券」。

定期券/回数券

1.運賃
(1)運賃の種類
ハの(4)一括定額運賃

 

閑散時等の需要喚起を目的として、あらかじめ利用回数の上限、利用時間帯の制限、適用地点又はエリア、タクシーの利用権を行使する期限等の条件を設定し、当該条件に応じた価格を定め、定額で複数回のタクシーの利用権を一括して設定する運賃。

例として、自宅から病院往復、10時〜16時の間、一か月20回という設定が考えられます。下の図の十勝中央観光タクシーが実証実験の例です。

タクシーの定額運賃 実証実験例(十勝中央観光タクシー)

変動迎車料金

2.料金
(2)料金の適用方法
ロ.迎車回送料金
(1)
1車両1回ごとの定額(一定距離まで無料とするもの、一定の距離に応じて段階的に料金を設定するもの及び需要に応じて料金を設定するものを含む。)

 

需要に応じて料金を設定する場合において、1回ごとの上限の額は、初乗運賃額又は認可済みの定額の迎車回送料金のうちいずれか低額な方(以下「基準料金額」という。)にその3倍増の額を加えた額までとすることとし、定額の場合の金額よりも高額となる場合には、配車対象となる車両の範囲を拡げるなどにより、配車能力を高めることとする。また、運送需要等を踏まえて一定期間における平均の迎車回送料金の額が基準料金額と一致するよう変動させるものとし、定期的に実施状況を管轄する地方運輸局長に報告することとする。

 

変動の仕組み(例:平日の○時〜○時は○円、それ以外は○円など)についてあらかじめ事業者の営業所・ホームページ、車内、配車アプリ上等において利用者に分かりやすく周知するものとする。

基準料金額の3倍(まで)

「1回ごとの上限の額は、初乗運賃額又は認可済みの定額の迎車回送料金のうちいずれか低額な方(以下「基準料金額」という。)にその3倍増の額を加えた額までとすることとし」ということなので、例えば初乗運賃が600円の場合、600+(600×3)=2400円までは迎車料金を設定できるようです。

ただし「定額の場合の金額よりも高額となる場合には」配車能力を高めることによって、迎車距離を短縮するなりして迎車料金を下げるようにして、迎車料金のほうが運賃よりも高くなることを回避する、ということでしょう。(迎車料金≦定額運賃)

迎車料金で利益は上げられません?

「運送需要等を踏まえて一定期間における平均の迎車回送料金の額が基準料金額と一致するよう変動させるものとし」とは、基準調金額は通常距離で設定されているので、迎車回送料金が繁閑状態で変化するとしても、距離制運賃を大きく逸脱して迎車料金で利益が上がるようなことはしない、というようなことなのでしょう。

下の図のように、平均すると結局は現在の定額迎車料金(この地方だと120円、10キロ先にお迎えに行っても120円)になるかもしれない。スリップ制の併用のほうが運転手には望ましい、そう思っていますが……。

変動迎車料金 実証実験例(大和自動車交通 国際自動車)

定額タクシーについて

今回の改正、定額タクシーについては、想定している「高齢者の通院」や「共働き夫婦の子どもの通塾」と言ったタクシー単独の運行もですが、鉄道バスの定期券との連結のほうがにニーズがあるのではないかと考えています。そういった考え方ですと、例えば名鉄タクシーなどの鉄道系の事業者はチャンスかもしれません。

変動迎車料金について

変動迎車料金に関しては、混雑時に優先的配車の需要を謳っています。しかし混雑時には配車もできないほど供給ギャップが拡大するのがタクシーです。ということは、駅や待機場にお客様が並んでしまうかもしれないですね。

バブル経済の頃、一万円札を振ってタクシーを停めた、と聞きます。そのようなことが起きると逆に弱者が切り捨てられませんか。

それよりも、予約配車に対して変動予約料金を設定できないかと考えています。すでに早朝予約料金が存在しますが、同じように時間帯によっては迎車料金と時間予約料金を併せて設定する。そして迎車料金はスリット方式(迎車回送からメーターセットをする)が良いようにも思います。

と、個人的な、そして地方の一個人の考えです。それよりも、どうも今回の改正も「サービスを提供する側の論理が強い」(河野太郎行革相)と感じている人も多いようです。例えば真冬の繁忙期にお金持ちは帰宅できて、貧乏人は凍えて待たなければならない、そういった不公平な配車(優先的な配車)が行われる予感もします。そして生産性や利益という公共とは相容れない思想が、配車忌避に繋がっていく、そんな予感もします。

需給問題は解消されません

歪な需給バランスに耐えれるような供給数、要するに乗務員不足の解消ってことも必要なことなのですが、これは二種免緩和なんてことでは解を得ない話で、そうなると、ギグワークみたいな話になって、LINEスキマニなんてサービスで…ってことでしか解決できないのかなあ、なんて思っています。

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