いなりタクシー廃業の謎

豊川市のいなりタクシーが廃業をした。これも規制緩和の弊害かもしれない。

タクシーの事業者数(個人タクシーを除く)は、1975年の7566社から2002年の7374社までほぼ横ばい、というよりも規制が効いていたため2000年ごろは減少気味に推移していた。

ところが2002年の改正道路運送法の施行で国による台数調整が廃止され、新規参入や増車が原則自由になったことで、その年を境に増加しピークの2007年には12844社にもなった。

その直後の金融危機での景気の後退にともない2008年以降はすこしずつ減少傾向にある。と言っても規制緩和以降の激増と比較すればそのカーブは緩やかではある。

需給のバランスは2008年から崩壊していると言ってもいい。

タクシー利用とコスト削減

企業はいかにコストを削減するかということによって、その生き残りを賭けてきた。そして、その影響はタクシーという贅沢な交通手段に最初に及んだろう。

「緩やかな」なのはタクシー事業者数と車両数の変化だけであって、世の中は激変した。

その「タクシー破壊法」と言われた規制緩和で崩壊した需給のバランスを正常に戻すために、今度はタクシーの減車を国は行っている。

2009年に「タクシー適正化、活性化特別措置法」がそれだ。増えた分を減らす政策、国のやることは単純だ。机上の数字でしかものごとを判断していない。

「供給過剰の進行等によりタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できていない地域を『特定地域』として指定する」という地域に規制をかける、というものだ。要するに失策だったわけだ。規制緩和祭りはちょっとはしゃぎ過ぎたわけだ。国としては「特定地域」だけではなくて、すべての地域で以前のように適正化、健全化したいはずなのだ。なにもその「特定地域」だけで規制緩和が行われたのではないのだから。

規制緩和の弊害

飛んで火にいる夏の虫…。

豊川のいなりタクシーは、そんなもうなにがなんでも「減車」というのが御上の方針が決まった真っ只中に、やってはいけないことをやったもんだから、少し厳しい処分を課せられた、そんな感じもする。

昨年夏「白バス」営業で書類送検されたことをこのブログでも書いた。

白バス
ボクは

気持ちは分からないでもない。おまけに申請中の新規事業だ。断ると同じ豊川市で営業している豊川タクシーや豊鉄タクシーに顧客を奪われるかもしれない。許可が下りるまでは「その程度」の運賃で運行して繋ぎ留めておきたいと思ったに違いない。いや、許可が下りるまでは「無料」でも、あるいはこちらからお金を払ってでも関係を保ちたかったに違いない。顧客心と秋の空…。

なんてことを書いた。だって、その規制緩和なければタクシー会社だって運転手だって、もう少し普通の、例えば全産業労働者平均と300万円なんて年収格差が生じないで、ごく普通の生活を送れたかもしれないのだし。そして緩和のあとは規制だ許認可だと振り回される。公共財というのなら、せめて公務員並みの給料を保障しろよ、いやいやせめて公務員様、お代官様の半分の年収でも…。

いなりタクシーの罪と罰

その「白バス」という罪の沙汰が決まったらしい。営業停止一か月。全車両停止ということらしい。どうなんだろう、これは少し厳しすぎないだろうか。いや、その「白バス」容疑で取り調べられた時に、他の罪も発覚したのだろうか。例えば過重労働とか、例えば無車検車があったとか…。

23台全てが営業停止され、55人全ての従業員が路頭に迷う。

いや、簡単に廃業してしまう社長の罪も問われるのではないのか。(たかだか)一か月の営業停止で全従業員を解雇してしまうというやり方も問題があるのではないのだろうか。そのことを国交省や厚労省は問題視しないのだろうか。

経営者の責任を問うべきではないのだろうか。まだ経営破たんしたということではないのだろうし、今後、例えば豊川タクシーや豊鉄タクシーとの合併ということで従業員を救済できるのではないのだろうか。

いや、でも、従業員(運転手)にロイアリティなんてものが希薄で、「別に」なんて思っていて、「解雇手当の30日分と失業手当が受給できるのだし、別にここじゃなくてもタクシー運転手なら求人あるし」なんて考えているのかもしれない。

結局、タクシーだけではなくて、国の政策に多くの国民が振り回され見殺しにされている。派遣法だってそうだ。
……。

いなりタクシー廃業

いなりタクシー廃業というニュースを聞いて、そう思った。

豊川稲荷の「いなり」を社名にした名門いなりタクシーの廃業、終焉にしてはなにか釈然としないものを感じた。いやそれよりもなによりも神も托枳尼真天もいないのか、なんて考えた。

2002年以前の事業者数になるとしたら、今後さらに4000社とか5000社についてこんなニュースを聞くのだろうか。そしてその数の何倍ものタクシードライバーが路頭に迷うと考えたら、やっぱりこの世には神も仏もいないのかなあ、なんて思うのだ。

(参考資料)www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/jigyousya_syaryou_suii.pdf

"豊川稲荷

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