「生活保護12万円では生活できない」問題について

「賃金を下げろ」と闘争する労働者はいない。
労働組合の存在意義は「賃上げ」だ。
「生活保護の厳格化」に対いして受給者が反対の声を上げ、「生活できない」なんて発言するのはよく分かる。自らの生活の質が低下することへ、誰だって反対する。お金を「くれる」というのに「いえ、もうけっこうです」なんて遠慮する人は、少ない。あれば使う、余れば貯蓄する、ごく自然な行動だ。人だけではなくて、動物の習性でもある。
逆に、お金を「奪うぞ」と言われれば、誰だって身体を張ってでも阻止しようとする。泥棒に「どうぞ」なんて差し出す人は、少ない。これまた自然な行動、習性でもある。

8日、毎日新聞では、「生活保護の厳格化」を掲げた政党に怯える受給者の実態を伝え、その内容がネット掲示板で話題になっている。
記事によると、4年前から生活保護を受けている無職の男性が「これ以上切り下げられたら、生活できない」と悲痛な叫びを訴えているという。その保護費は月額12万3000円、家賃4万5000円、光熱費と携帯電話の料金が合わせて2万~3万円。食事は自炊、夜にスーパーで値引きされる物を買っているが、手元に保護費は残らないとしている。
生活保護の受給者「生活できない」に怒りの声が続出(トピックニュース) – 国内 – livedoor ニュース

12万3000円…、その多寡で言えば、個人的には「多い」と感じる。タクシー運転手のかなりの人たちがそれぐらいの手取りで暮らしている。汗水流しても生活保護費以下の収入で生きている人たちがこの世にはごまんといる。
例えばAさんの場合、先月の手取りは12万円強。家賃3万円、光熱水道費7500円、携帯電話2800円、食費40000円、生命保険など5000円、これが彼の出費の全てだ。85300円。それでも35000円が残り、それを貯蓄する。食費が高いのは外食が多いのでしかたない。
Bさんの場合も同じような収入、奥さんが働いていてその収入が15万円程度。2人合わせて27万円。2人の小学生を育てる。
AさんもBさんも貯蓄するという意識が高い。それは子どものためだったり、老後のためだったり、動けなくなったときのためだったりする。将来の不安から節約する。スーパーでの見切り商品は当たり前で、衣類はユニクロは高いのでguだったりしまむらだったり、100均のネクタイだったり、Yシャツだったりもする。
彼らが(もちろんボクも)貧しいとは思えない。それなりに楽しく生きている、と思う。それに彼らには(ボクにはないけれど)それなりの意地みたいなものがあるのだろうし、特に(子どものいる)Bさんには生活保護に対する恥みたいなものもあるのだろう。
意地や恥みたいなものは、たぶん、なにかの拍子に一気に失ってしまうのだろうと思う。働いても(それも危険を冒して)12万円、遊んでも12万円ならば、普通は後者を選択するはずだ。そして、それはきっと麻薬みたいなもので、一度味わうと離れ難くなるに決まっている。
求められているのは、生活保護費の厳格化でもなく、生活保護の厳格化でもなく、受給者をいかに就労へ導くかという、ごく当たり前の、そして陳腐ともいえる議論なんだろう。
あるいは、「貰わなければ損」みたいな風潮、たぶんそれは社会格差、不平等感からくるんだろうけれど、そういったものを失くすことも必要なのだろうと思う。それには生活保護費を引き下げるのではなくて、労働者の(格差是正の)賃上げ、というごく当たり前のことが、まず最初に行われるべきなんだ。
八町歩道橋から
八町歩道橋から

8件のコメント

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    人間の世界も食物連鎖みたいなものがあって、弱いものを食べることによって成り立っているのだろうけれど…。

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    たしかに弱者ビジネスって言った方が適当ですね。

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    貧困ビジネスというか、弱者ビジネスが花盛りだしなあ。
    高級介護施設なんてのは、弱者ビジネスか。まあ、どこにでも利権に群がるビジネスマンはいるもんなんだろうなあ。

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    生活保護+介護保険を目一杯申請すると月35万くらいになるそうですね。 それに目を付け貧困ビジネス業者がのさばる訳ですね。

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    等級分けってのは、まあ、そんな議論もあるけれど、難しいかなあ。病気や障害だとその程度により等級を分けているけれど…。まあ、ベーシックインカムってのもありかと。
    最賃問題は、あれは少し間違って伝わっていてる部分もあるかなあ。デフレ是正というのが前提なのだろうけれど。
    いろいろと変えなければいけない時期なんでしょうね。ボクとしては、BIかなあ。年金問題なんてのは同公平に解決できるんだろうか。

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    生活保護の厳格化というか見直しは、ある程度必要ではないかと思っています。
    例えば、現状では医療費が無料になっていますが、保険料は免除されても最低限後期高齢者と同等の額を自己負担すべきではないかとか。さといもさんが提案する様な等級化も必要かもしれませんね。
    「一度味わうと離れ難くなるに決まっている」今のままでは、そうかもしれませんね。
    年金や社会保険も負担せず、いざとなったら生活保護を受ければいいや、医者にもかからなきゃ損損、というようなことが罷り通ることがない制度であって欲しいものです。
    健康な人に対しては失業給付のように期間がなければならないのかもしれません。しかし、期間が過ぎたときにどうなるのか・・・。収容施設みたいなものが作られるのも怖い気がします。

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    生活保護をいくつかの等級に分類するのを提案します。
    病気や障害等で働く事が極めて困難な方と身体に問題のないまだ働ける年齢の方が全く同じ制度の下にあるのは何か違うと思うのです。
    例えばそれによって医療費も完全無料だったり一部負担だったりと区別があってもいいでしょう。
    生活保護は少しでも働いていたら貰えないといった誤解も一部にありどうせ生計を立てれる程働けないのなら全て生活保護に頼ったほうが増しといった考えも一部にあります。
    某政党の方が「最低賃金は廃止するべき」といった事を言っていましたがこれはとんでもない。これに賛同する労働者の方はまず居ないでしょう。いくら実力主義であっても最低限の保証はないといけないのは当然です。

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    最低賃金上げて欲しいです!今度の選挙も、何も、期待できそうにないです。脱力というか、絶望というか・・・国民年金払えなくなります。国民年金より、生活保護の方が高いのも、おかしいです!!!日本は、セーフティネットが脆弱です。「保障」の無い身で働いてる人間は、沢山います。医者にもかかれません。下流や弱者に、負担を押し付けないで欲しい・・・頑張れば、真面目に働けば報われるなんて社会は、もうこないのでしょうか?希望なんてもてません(泣)

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