訪う人のない部屋のチャイムが鳴ったとしても、それは何かの商品とか宗教の勧誘なのだから、いつも無視している。「は～い」なんて出ることはないのは、隣の部屋の住人も、その隣の住人も同じで、このアパートに来るセールスマンや宗教家はいつもガッカリして階段を降りているに違いない。というか人の気配がしない不気味さみたいなものを感じているかもしれない。
貧乏長屋なんていうと人の温もりがあるのが相場なのだけれど、この貧乏長屋にはそういったもんが全くなく多くは気配を殺して生きている。閑寂なんてことではなくて、ノッペラとした乾燥した空間なのだ。
開け放された窓からはテレビの音さえしない。貧乏なもんだから今度の地デジにも取り残されてしまったのか、元々テレビなんてものがなかったのかもしれない。NHKのシールが貼られていない部屋も多い。
引籠りで人嫌いのボクにとっては快適な空間だ。面倒くさい人間関係なんてものがないので時間もお金も思考、とにかくすべてのものを自分に振り分けられる。
高齢で独身、貧し人たちが多い、というこの国の抱える問題がそのまま存在する。アパートだけでなくて、タクシー会社でも同じことだ。タクシー会社がそういった人たちの雇用の受け皿になっている。セイフティネットとして存在している。ボクの場合は保証人も要求されなかったのだからアパートに入居するよりは簡単に入ることができた。
人間関係、世間なんてものに倦み疲れてしまってやって来るひとが多い。リストラや雇止めという雇用上の問題、離婚なんて生活上の問題から職を失いやって来るひとが多い。
アパートも会社も高齢、独身、貧困の問題を抱えている。というか、一般の社会とは隔離された場所がそこの存在しているようでもある。そういう場所が快適なのだ。格差は相対的なものなのだ。不幸の存在、あるいは共有が不遇感を抹消する。
コミュニティなんてものではなくてもう少し楽な場所、規則とか規律なんてもので拘束された共同体ではなくてもう少し簡単な場所。
そういう場所とかそういうシステムの善悪を論ずるのではなくて、そんな場所が必要だということだ。斎藤勇太も加藤智大も引寺俊明も、その場所を探すことができたならば、何かが壊れることなく、ボクと同じような生活を送っていただろう。
幸福という定義付が行われる。政治も宗教もそれを明文化することだけを目指してきた。それがいったいなんになるというのだ。その定義からこぼれた落ちた人たちは不幸という烙印を押される。そしてその不幸感の中でもがかなければならない。
年収２００万円以下の給与所得者が５年連続で１０００万人を超えたそうだ。
年収２００万円以下１０００万人超/給与所得者、５年連続で
アパートの住人もタクシー会社の従業員もほとんどがその低所得者だ。勝手に不幸だと言われてもなにかピンこない。人はヤドカリみたいんもんで、その殻の大きさの生き方をする。持ち物が増えると悲しみも増える。失うものを守ろうとするから生活に余裕がなくなるし、失わないようにまた増やしいてゆく。
マスコミが消費を煽る。「買わないと不幸になりますよ」というメッセージを送る。テレビなんてのは宣伝の間に番組をやっているようなものなのだ。まるで壺売り商法。
「年収２００万円撲滅運動」は政治家や宗教家や学者がどんなに騒いでも今後改善されない。そえどころか年収２００万円が不幸だとういう定義づけのほうがもっと不幸な事態を産む。今まで通りに壺売り商法国家は経済という唯一神を崇めたてる。
テレビも車もない生活、消費しない生活が経済の縮小をまねき、さらに貧困を拡大させる、なんてことも、実はプロパガンダなのだ。テレビも車も電気も捨てて、かなりシンプルな生活をすることが不幸なのかということなのだ。その不幸の定義という仕入れ先は、そのシンプルな生活をされては困る人たちの口からなのだから。
まあ、みんなたっぷりの幸せを詰め放題で欲しいのだから、欲深い。原発廃止＝年収２００万円、そこで手打ちをしようなんて誰も言わない。ボクに言わせれば、脱原発、脱車、脱テレビ、これで丸く収まらないか？
まあ、いい。話がバラケたところで、寝るか。