豊川工業高校の体罰事件で考えたこと

豊川工業高校の体罰事件のニュースが目に入ると、すぐに中学生の頃のことを思い出した。あの教師はとんでもない人だった。今だと、ニュースになっているだろうし、懲戒解雇だろう。そんな教師が何人かいた。

変態教師のこと

その、英語教師のMは、ボクたちが宿題を忘れたとかテストの点数が悪いなんてときには、廊下に正座させては殴る蹴るなんてことを平気でしていた変態教師だった。

そのことを隣の教室にいた教師も、あるいは管理者である教頭や校長も知っていた。しかし、とうとう最後までその悪癖は止まることがなかった。

ボクたちの誰ひとりとしてMのことを恩師なんて尊敬をもって呼ぶこともなかった。こうして数十年過ぎて時効の時が来たとしても彼を赦していないと思う。

……。

豊川工業高校陸上部の体罰

豊川市という身近な場所が体罰でクローズアップされる。

学校の生徒や父兄、卒業生や監督の知人なんて人たちの話が聞こえてきて、ずいぶんと体温を感じる事件となる。そうなると少し違った見方をするようになる。

朝日新聞デジタル:豊川工高陸上部監督が繰り返し体罰 学校ぐるみで隠す – 社会

学校ぐるみ、というか、親子ぐるみ父兄ぐるみで隠してきたのだろう。“竹本校長は、この2件の体罰を発生直後に把握したが、「保護者や被害生徒本人に『伏せておいてほしい』と求められた」として、今月25日まで県教委に報告していなかった”ということは真実なのだろうと思う。

そして事件が明るみになって大きく取り上げられたとしても、関係者の多くは監督の処分を望んでいない。それどころか監督のこれまでの実績と相殺しようとする。

学校全体で隠蔽

いや、その前に「保護者や被害生徒本人」だけではなくて、在校生、卒業生、学校関係者が「伏せておいてほしい」と思っていて、そうした空気が事件を隠ぺいする要因となったし、真相究明なんてことの妨げに、処分のゆるさに繋がっている。

「みんなのために黙っておいてくれ」なんて言われたのかもしれないし、村八分という恐怖が身体の片隅をよぎったのかもしれない。

彼らがどうして「伏せておいてほしい」と強く念じるのかと言えば、陸上部というブランド力によってもたらされる進学や就職という利益があるからなのだ。

「みんなの利益ため」なのだ。みんなの利益>ひとりの利益、というごく普通の図式にはめようとする。そしてそうすることが当事者たちにとっては、これまたごく普通のことなのだ。

地域の絆、ムラ社会の掟

例えば豊川市内や豊橋市内には「豊川工業高校陸上部」という強い絆があって、それは見えたり見えなかったりするのだけれど、有効に働いている。その絆を「コネ」と言ったりもする。「コネ」での進学もあったりする。これから卒業する在校生にとってはその「コネ」の弱体化はとりあえず恐怖になる。「伏せておいてほしい」のだ。

卒業生にとっては絆=ムラの消滅は彼らのアイデンティティの消滅であって、力の消滅なのだ。彼らを守ってくれる、見えたり見えなかったりするものがなくなるというこれまで経験したことのない恐怖におびえている。

そう考えると、桜宮高校在校生の記者会見や、保護者らが応援団をつくるなんて不可解な行動も理解できる。さしせまった進学や就職に「体育科」という力の消滅が恐怖なのだ。体育科入学とともに約束された就職や進学が破棄されてしまう。内申書にだって響くだろう。

一発の価値

保護者にとっては、あるいは本人たちも、一発二発殴られるよりも就職難のご時世、なにがなんでも進学したいし就職したいのだろう。そして、これまた、なにがなんでも自分たちのムラを守りたい。それは人間の本能でもある。民族、宗教、国家、ありとあらえる集団で「伏せてほしい」ということが起こる。そして、誰かが犠牲になっている。

全ての人が「体罰反対」なんてことにはならないと思うし、家庭や会社でも「体罰」が行われていて、それはなにも殴る蹴るだけではなくて言葉によるものだったりするのだけれど、きっとどんなに騒いでも、法律で禁止されても、体罰ってのはなくならないのだろうね。

愛が全てさ

「先生はお前のことを思って」なんて愛とすり替えられるしね。そしてその「愛」という免罪符とともに暴力が肯定されるわけだし…。

要するに「愛」があるところ「暴力」もあるってことだ。

桜宮高 保護者ら応援の会結成 「市長の発言は言葉の暴力だ」 ― スポニチ Sponichi Annex 社会
豊川工業高校もか!?|尾木直樹オフィシャルブログ「オギ☆ブロ」Powered by Ameba


雪、下地町あたり

体罰問題で考えたこと昨日の続き… 教育現場でのスポーツというのは「勝つ」ということが目的ではなくて、「負ける」ことを知ることが目的だと、豊川工業陸上部監督の体罰問題の時に考えた。勝つことが正しい…
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体罰問題で考えたこと

2件のコメント

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    そうですね、体罰がどう、ってことではなくて、なにかカルト的なものを感じますね。特に桜宮の場合は。
    豊川工業もそうなんですけれど、顧問擁護という人がかなりいて、まあ、やっぱりカルトみたいなもんで、いまだに麻原を尊師として敬う人もいるんだし・・・。
    永遠に解決しない、というか、人間だからなあ…。

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    もはや体罰がどう、という話ではなくなっているような気がします。
    イジメもそうですが、生徒が自殺まで追い込まれているんですよね。
    学校、生徒、保護者、の対応を見るに「死人のことはもう終わったこと。生きてる人間(すなわち自分)を大事にしましょう」。って感じなんですかね。
    これでは報われないですよね。
    しかし教育委員会、、
    言いたいことが有りすぎなので以下略、ということで。
    嫌な事件ですね。
    ある意味永遠に解決しない、同じことが未来永劫続くのでしょう。
    はあ…

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