ポカラでハニーチーズーナン

アディスアベバ、ボレマンガード、ボクたちのねぐら近くにインド料理店があって、よく行った。と言ってもボクのような貧乏人にとっては「通える」ほど安くもなかったし、一食分がその当時のマミティ(お手伝いさん)やザバニア(警備、門番)の月給なんて金額だったのだから、そう度々は行けるはずもなく、「じゃあ、ちょっと贅沢にSangam’sに行くか」と、少し気合を入れて、現地食にうんざりした時になんかに行ってはいた。
そのSangam’s(「サンガム」と言っていたのだけれ)には時の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム大統領にそっくりのウェイターがいて、料理のことよりは彼のことのほうが記憶に残っていたりする。
メンギスツ・ハイレ・マリアムそっくりさん
OさんやM、O女史なんてメンバーでサンガムに行った時の写真。トリミングしているのだけれど、実際のものは左にボク、右にMが写っていて、たぶんOさんが写した。O女史は、きっと嫌がって、せっかくの大統領氏との記念写真にはおさまらなかった。
メンギスツそっくりさんはかなり嫌そうな顔をしている。あの時、ボクたちは「ここに座って、ビールを片手に、一緒に写真を撮らせてくれないか」なんて頼んだ。彼は、ほんとうは、「メンギスツそっくりさん」なんて言われることが嫌いで、それでも独裁政権下でその「嫌い」なんて微妙なニュアンスから誤解が生じ、不敬罪なんてことで拉致監禁なんてことになるのも嫌なので、嫌々渋々ボクたちのリクエストに応えてくれたのだろう。
サンガム、まだあるのかなあ…。そしてそっくりさん、まだ生きているかなあ。いろいろなことが起こり過ぎた頃…。
ポカラでココナッツチキンカレーとハニーチーズナンを食べながら、あの頃のことを考えていた。もう行くことはないのだろうけれど…。そしてボクたちも揃ってカレーなんて食べることもないのだろうけれど…。
少しだけ、いや、とてもなのかもしれない、ボクは「出会い」なんてものを粗末にしてきたように思う。どこかで、すっかりとそんなことに倦み疲れてしまったように思う。本当は、一番大切にしなければならないものだったのに…。人の繋がりの持つ力みたいなものに対してどうも信じられないようになってしまっていて、独りで生きることの気楽さを選んでしまったように思う。
人といることは面倒くさかったりする。そしてこんなクリスマスイブだって独りのほうが楽でいい。そうしてもう他人なんてものとは遠いところにいて、自己なんてものからも遠のいて、少し離れた位置で暮らしていけたらと思う。人と話さなくても、誰から依頼されなくても、ボクにはたぶんそんなことは平気だと思えるんだ。カッコいい車も、綺麗な洋服も、居心地の良い住まいも、全て必要はなくて、寒さと暑さと飢えと餓えをしのげるだけのものがあれば、生きていけるようにも思う。
神も仏もいらない、それがボクのボクらしい生き方のように思うんだ。
それにしても、ハニーチーズナンは甘くてもっちりで、もう次は良いかなあ…。
ポカラでココナッツチキンカレーとハニーチーズナン

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