くじらの問題なのだ、おばいけって知ってる?

くじら、いつ食べた?

早朝6時に考えることでもないんだけれど、記憶を掘り起こしている。

くじら、ではなく、おばいけ疑惑

たしか、20年とかもっと前か。というか「くじらを食べた」のではなくて、「おばいけ」というくじらの尾の身を塩漬けにして薄くスライスし湯通ししたものを、食べた記憶がある。

これまた「おばいけ」を頼んで食べたのではなくて、確か酢の物の小鉢の中にタコやキュウリやワカメなんかと並んでいたのだ。

単品でおばいけがあったかは憶えていないけれど、マーケットには袋に小分けされてあったし、きゅうりやワカメほどの脇役の値段だったと思う。酢味噌で食べると美味しかった。

「おばいけ」という鯨の食べ物が九州、大阪にはありますが「白い寒天のような見た目で… – Yahoo!知恵袋

それが確か20年以上前で、ボクの食生活には絶滅してしまったし、味蕾の記憶も消滅してしまっている。

キリンやワニを食べたときの感覚は憶えているのに…。

贅沢品ではなく肉がなかったからね

くじらカレーを食べていた。少年の頃の話なのだけれど、それは贅沢ということではなくて、貧しさの象徴としての料理だったように思う。

あの頃は牛肉や豚肉なんてものは希少な高級品だった。

豚を数頭飼ってそれで生計をたてていた人がいたぐらいだから、家畜はかなりの高値で取引されていたと思う。

ボクたちだけではなくて多くの日本人が蛋白源としてくじらを必要としていた時代だ。

くじらカレーと言っても、そのレシピには生肉や干し肉なんてものがあるわけではなくて、もっぱらくじらの缶詰が使われていた。

ジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、そして缶詰が投入されたものだった。カレーの辛さの中にくじらの大和煮の甘さが加わって、ボクは好きだった。というか、カレーが好きだったのだろうけれど。

今でもボクのカレーには砂糖や蜂蜜が入る。辛く(たぶん驚くほど辛いと思う)そして甘いカレーが好きなのは、幼い頃のくじらカレーの記憶がそうさせているのだろう。

調査捕鯨

4月、国際司法裁判所において南極海での日本の調査捕鯨が国際捕鯨取締条約に違反するという判決が出た。現在わが国で流通している鯨肉の約20%がその南極海で捕獲されたものらしい。といっても、今言ったようにボクの食生活において20年以上も前に消滅してしまっているので、ほとんど影響がない。

「食文化」ということでくじらが語られる。

今度の判決においても論点をそこに反論する人が多い。

確かにおばいけなんて高度な加工技術を必要とする食品には、食べるということだけではなくていろいろな文化的要素が詰まっているし、おばいけを造ることによってそれら文化が相互的に発展し日本人文化を醸造したのだろう。文化とはそういうものだ。単独では存在しない。

くじらだけではなくて、多くの文化が消滅し消滅しようとしている。文化財保護法なんてもので保護しなければならないほど、ボクたちの周りの文化は危うく、変化し続けている。ボクたちはこの国の文化を守らなければならないのだ、それが日本人としての……。

文化より安価の時代

う~ん、でもね、文化ってそんなに重要なのだろうか?

「ふ~ん、そんなもんオレには関係ないよ」とボクも思っている。

「文化より安価よね」とも思っている。

文化がボクを幸せにしてくれるとも思えない。輪島塗よりダイソーのメラミン塗装の器。竹籠よりプラスティック籠だし。和服より洋服。米よりパン。くじらより牛肉。なによりもボクたちはMade in JapanよりMade in Chinaが好きなのだ。

今さらくじら、くじら、と目くじらを立てても、もう取り返しのつかない。やっぱり文化よりは安価なものを選択し必要としている。くじらよりもTPPでオージービーフの安いのがジャンジャン輸入されて我が家の食卓にも牛肉とやらが並ぶようになってくれたほうが、本音はうれしい。きっと多くの人がそう思っているに違いない。

だってくじらなんて20年も食べてないんだもん。それに日本の高い和牛や高いなんとか豚も食べてないんだもん。

消費税は上がり、賃金は実質下がり、将来にはなんの夢も希望もないのなら、せめて食べたいものをたらふく食べられるほうが、幸せってもんだろう、そう清々しい朝にウジウジと考えているのだ。さてと寝るか。

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