共有地の悲劇~タクシー規制について(2)~

規制と自由。共有地の悲劇とタクシー規制について。

ぬるま湯の中にいるほとんどの日本人にとっては「自由」のほうを選択するに違いない。それはイデオロギーとか宗教的なものとか親の遺言なんてことではない。ただ脊髄反射的に「自由はすばらしい」と身体が脳がオートマティックに選択するようになってしまっているからだ。

本当に自由ってのはボクたちの生活を良質なものにするのだろうか。そして社会を円滑に動かす法則なのだろうか。極論を言えば「じゃあ、法律なんて取っ払って自由に生きようよ」なんてことになる。街を歩くだけで強盗や強姦の恐怖に怯えなければならなくなる。モラルや道徳なんてものが一部生き残ったとしても、力関係の仕組みがこの世を治める弱肉強食の時代になる。それが本当の自由ってやつだ。それって本当にすばらしいことですか?

タクシー規制と自由と甘い言葉

規制があるから自由に生きられる。ということをすっかり忘れてしまって「規制緩和」「自由化」という政治的、選挙的な甘言をすっかり真に受けてしまって思考停止しているのが、この国の人々のように感じる。

さてさて、「Uberが普及しないたったひとつの理由~タクシー規制について(1)」に続いての第二弾。(そんなに真新しいことは書けないのだけれど…)

誰もが旅客業務を行えるようになったら…考えただけで怖いと思うのは、この業界にいるボクだけではないはずだ。2月にUberが「実験的に」行った「シェアライド」。これまた外国語に弱い日本人にはとても耳障りの良い。例えば「クリームケーキ」みたいに、それはとっても素晴らしい実験に聞こえたに違いない。そして、相変わらず洋物に対して免疫力のない日本人には「アメリカンコーヒー」ほどに健康的に映ったに違いない。相変わらずの盲信ぶりなのだ。

結果的には国交省からの中止指導で「実験を終了した」。つまり〝白タク行為″に対して法が待ったをかけたのだ。

脱法タクシー

「ウーバーはGPSで客の最も近くにいる車が手配されるので、海外のように自動車を持っている一般人もタクシー・ハイヤーとして営業できるようになれば、流しのタクシーが容易に拾えない地域では非常に便利だ。提供者のほうもサラリーマンが夜や週末の空いた時間を利用してセカンドビジネスができるし、リタイアした高齢者が収入を得る手段にもある」

と大前研一先生が書いている通り。一般人が夜や週末の開いた時間を利用して(無許可で)タクシー営業をすることが出来るのがUberなのだ。そしてそれはそのまま白タクという脱法行為になる。Uber=違法なのだ。脱法タクシーならまだいいが、危険タクシーになる可能性もある。(ハーブの次はタクシーだね)

二種免許と運行管理

こんなことが許されるならば、二種免許なんて制度も必要ない。運行管理者なんて資格も必要なくなる。ついでに国交省もいらない。必要なのはスマホと運転免許証だけだ。それでも安全が担保されるのならばいい。しかし利用後にしかその運転手が評価されない。そして悪質な運転手の斥力も利用後にしか発生しない。つまり強姦や強盗を企てている人にはもってこいのシステムとも言える。(無理)心中タクシーなんてのも出てくるに決まっている。気が付いたら貨物船で外洋だった、なんて。自由だ。すばらしい。自由万歳だ。

ということで、ほんとうに規制緩和し自由化になって白タク行為が普通に行われて良いのですか?ほんとうに素晴らしいことなだろうか?

共有地の悲劇

共有地はみんなで管理されなければ荒れ放題になってしまう。その共有地では「安心」とか「安全」とか「おもてなし」そして「公益」なんてものを育んでいる。時として柵を設けて土地を荒らすものの侵入を止めなければならない。柵を取っ払って、そして管理を止めて、みんなが好き勝手なことをやったもの勝ちでやっていたら、二度と使えなくる。それが共有地の悲劇だ。それがタクシー業界なのだ。だから規制が必要だと言うことなのだ。

まあ、強盗や強姦なんてリスクよりも便利さを選択したいのならば、それはそれで良いのだけれど、荒廃した共有地からは良質なタクシーもいなくなってしまう、ということも忘れないでください。

それともう一点、車が売れなくなるので、トヨタをはじめとする自動車メーカーも、そこのところを考えてもらいたいなあ、と思っているんだけれど…。

Uber、国交省から中止指導のライドシェア実験をいったん終了 – ITmedia ニュース
タクシー特措法改定を機に,乱暴で粗雑な自由化論に歯止めを | 京都大学 都市社会工学専攻 藤井研究室

シャコバサボテン 2015年
第三回は「雇用のセイフティネットとしてのタクシー業界」なのだ。

4件のコメント

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    さといもさん、どうも。
    日本とアメリカのタクシー事情の違いで、きっとシェアライドなんてのは難しいと思うのですが、これからの高齢化や過疎地においては、なにか違った形でシェアライドがあるかもしれないですね。
    タクシーのシェアライドはもうすでにあるのですが…。

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    こんにちは。
    きちんと許認可を受けた業者であることが利用者にとって安心感だと思うのでこれはどう考えても反対。たとえ二種免許所持者のみ解禁であっても。
    どんな業種でもそうだけど一定の規制があるからこそ悪質なぼったくりなどがある程度排除出来ているのではないでしょうか。
    白タクについてですが客学生従業員などの送迎バスなどは白ナンバーでいいの?二種免許要らないの?と思っている方が一部居るけど法律上は無償での送迎であれば不要みたいです。だけど業者に委託=緑ナンバーのものも見かけるので紛らわしいのは否めません。

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    元2塗装さん、こんばんは。
    あと、料金も。どこかの国のようにおもいっきりボラれた、なんてことはないはずです。
    Uberじゃない白タクも増えてきて、安心とか安全なんてものがなくなると思います。

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    おはようございます。
    タクシーは、出張時や酒を飲んで終電が無くなったときによく使います。
    確かに海外のタクシーは、清潔感であったり、運転手の服装といった
    点で、一般のドライバーと大差ありません。
    でも日本のタクシーは、清掃が行き届いてて、服装も制服だしで
    一般ドライバーとの違いが大きすぎます。

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