貨客混載、もっとタクシーを!

鬼祭りの朝。

Kさんの死や父の命日が重なってなんだか息苦しい二月の初めだったのだけれど、鬼祭りの朝は暖かくて、布団を干したりシーツを洗濯していると少し、頭の後ろあたりにある息苦しさのもとみたいなものが薄れている。

父親は十年ほど入退院を繰り返した後に病院で死んだ。両親ともタクシーにはずいぶんとお世話になった。故郷は過疎地にあってバスの便も少なく、自家用車がないと買い物にも不自由する地域だ。ボクが小さい時はそれでも近所に数件の食料品兼雑貨屋や酒屋なんてものがあったのだけれど、今では1店舗のみになっている。

実家からその店舗へは500メートル以上離れていて母親は、いわゆる買い物難民なのだ。その雑貨屋も店主の高齢化によっていつ閉店するか分からない。そうなると数キロ離れた地域まで買い物に行かなければならなくなる。

タクシーを利用する老人に、故郷の母親のことを想う。きっと「近くだけど悪いねえ」なんて気を使って乗っているに決まっている。身体が動けば1キロぐらいの徒歩での移動はなんでもないのだけれど、人間80歳を超えるとその距離も辛くなる。辛くなるどころか歩くことが困難な人だっている。母親もあと数年すればそういう状態になるかもしれない。

過疎化や都市計画の失策によって母親のような買い物難民が増加している。クルマ社会の弊害がここにきて露呈している。商業施設、医療施設、公共施設までも郊外化したツケが、社会が高齢化、核家族化することによってまわってきている。

そのためにコミュニティバスやオンデマンドタクシーを運営しなければならなくなった。今の世の中移動できないということは死を意味する。交通なくして生存さえできない。あらたなるクルマ社会の到来だ。自ら運転して移動するクルマ社会から、運転してもらうクルマ社会になっている。

国土交通省の交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会で、自動車輸送の新たな方針について中間報告があり、その中に「貨物と人とを混載する貨客混載輸送の解禁」「タクシー業者やトラック業者などによる生活支援サービスや介護サービスの提供」なんてものがある。

例えばクロネコヤマトの宅配便のトラックや郵便の集配車に乗客を乗せられるようになったり、タクシーで買物をして宅配するなんてことが可能になるということだ。

便利かもしれない。郵便局へ行くのに郵便集配車に乗って行くのは都合が良い。郵便局がコンビニを経営するようになるともっと便利になるかもしれない。いやコンビニがタクシー経営に進出するかもしれない。これまた母のような買い物難民にはありがたい。

タクシーはどうだろうか。物の集配、独居者の見回りの業務にニーズが高まるかもしれない。例えばワタミやヨシケイなんて宅食業者の配達をタクシーが行うようになるかもしれない。回送のついでに見回り業務をするようになるかもしれない。オンデマンドタクシーが真のオンデマンドになってゆくなんてことも考えられる。全ての車両が介護タクシーになるかもしれない。そしてamazonやイオンなんてネットスーパーの配達を受け持つようになるかもしれない。高齢者が免許を返納するとタクシー券がもらえるようにきっとなる。老人福祉タクシーチケットは今後さらに増える。ウハウハなのだ。

タクシーに未来はある。そう思うのだ。新しいクルマ社会を担うようになる。自ら運転するクルマ社会は終わるのだから。

ボクはそうなってほしいと思うのだ。そうすると田舎に独りで暮らす母親の気苦労も少しは減るだろう。いやその前にボクたちがボクたちの老後のことを考えると「好きな時に好きな場所へ行かせてくれ」る社会のほうがずっと幸せに決まっている。だからもっとタクシーを!なのだ。タクシーが日本を救うに決まっている。

そう思うのだ。さてと…。

報道発表資料:交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会 – 国土交通省

農林水産省の農林水産政策研究所は、自宅から生鮮食料品を扱う店まで500メートル以上あり、自動車を持たない65歳以上の「買い物難民」が2025年に全国で598万人にのぼり、10年の382万人から200万人以上増えるとの推計をまとめた。

食料品アクセス(買い物弱者等)問題の現状について:農林水産省

鬼祭り
安久美神戸神明社にて

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