ボーナスと非正規労働者

「低欲望社会」は消費者の自発的行動なのか、あるいは社会全体の貧困化によって欲望が抑制されていることによって起きているのだろうか。

ソローの「森の生活」のような「小屋暮らし」をする若者が増えているらしい。とてもうらやましく思うのだけれど、自発的だと思われる彼らの小屋暮らしも、消費社会への抵抗とか、文明社会からの逃避なんてものではなくて、ローコストだというのがその理由のようだ。家に車に家電、そして結婚、そういったものへの欲望が、若者には(オジサンもだけれど)喪失してしまっている。かわりに3坪の家に住み、自転車に乗り、ネットで社会と繋がる、なんて生活スタイルになってしまっている。

貧困とはちがう低欲望社会が形成されてしまっている。それは国家にとってはたしかに重篤な問題なのだろう。しかしまだ定住して定職に就いて、欲望の少ない生活を送っているうちは良いのだが、無欲望社会になって多くの若者がホームレス化すると、問題は今よりさらに深刻化する。

ボーナスシーズンだ。この週末で、公務員も民間企業もほぼ支給されたのだろう。ボーナス商戦できっと小売店は賑わっているのだろう。飲食店も家族連れて、そして夜の街も賑わって…いや、ちょっと待てよ、そんなに賑わっていないように感じる。

ボーナス商戦、夏冬合わせるとボーナスだけでボクたちの年収を超えてしまう137万円もの支給のあったトヨタ自動車をはじめ、アベノミクスで昨年よりも支給額が増えている企業が多いはずだ。(ボクたちの年収というよりも、期間従業員の年収といったほうが良いか)

トヨタだけではなくて、アイシンもデンソーも豊田合成もトピー工業も、田原の緑が浜工業団地や豊橋の明海工業団地にある企業のボーナスは100万円は下らないはずだ。

それだけもらっているはずなのに、どうも街には「でたぞ~」なんてウキウキ顔の人たちは少ないように感じる。低消費社会。ギリシャ問題や中国バブルの崩壊による危機感から支出が抑えているのだろうか。それとも、もうすっかり癖になってしまったデフレ消費、安物買いが、ユニクロや回転ずし、食べ放題店だけに集客させているのだろうか。

低所得者だけではなくてトヨタのような富裕層まで低欲望、低消費にさせてしまっている。要するにみんなケチになってしまったということだ。

いや、まてよ、どうも少し違うように感じる。週末、繁華街は確かに賑わっている。タクシーは神待ち状態になる。広小路や豊橋駅では「一時間待ち」になる。高欲望、高消費の人たちが、湧いて出てくる。でも、そういう「でたぞ~」的な人たちってのは、実は非正規雇用の人たちだったりして、もうどうにもならない世の中を刹那的に生きている「宵越しの金は持たない」という人たちだ。

高所得者(正規雇用者)は将来のために低欲望低消費になり、低所得者(非正規雇用者)は刹那的に高欲望高消費になる。資産は偏って存在してしまう。格差はここでも拡大する。

同一労働同一賃金なんてものとはほど遠く、何年も何十年も派遣で期間工で働こうと年間200万円以上の格差が賃金とは違うところ、ボーナスでついてしまう。

というか、ボーナスを知らずに若者は育ってしまう。労働者の4割近くが非正規労働者で、ボーナスが出ない人たちだ。ボーナス商戦が盛り上がらず、相変わらずエイデンよりはユニクロに人々が集中している、というのがこの国の姿なのだ。それが良い、とは思わない。働き方を論じたところで意味はない。せめて人権問題として同一賃金ということを扱わないと、国破れてトヨタあり、にきっとなる。


バブルがはじけて僕らは生まれた
ボーナスを知らずにボクらは育った
大人になって歩きはじめる
労働の歌を口ずさみながら
僕らの名前を覚えてほしい
ボーナスを知らない子どもたちさ

戦争を知らない子供たち (曲) – Wikipedia

非正規雇用割合
第65回 雇用者の37.4%は非正規労働者~男性非正規労働者の割合も増加?~ | 日本生命保険相互会社

1件のコメント

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    こんばんは。
    個人的な意見ですが役員が捕まったからそれによる自粛ムードが一部にはあるかもしれません。
    たくさん貰ってる方はその分消費し地域経済に貢献せよと言いますしそれ自体は必要かと思いますが度を越えてしまうと逆に反感買う事もあるからさじ加減が難しいのはあります。
    あと家の支払いやお子さんの教育費に大半が消えるなんて話もよく聞きますね。
    期間従業員は満了金が実質ボーナスだろとの意見を昔聞いた事ありますがそう思った事もあるし違うと思った事の両方があります。
    パートやアルバイトでも金額はともかく出るところは出るわけだから寸志や金一封といった名目でもいいから支給があっても全然おかしくはありません。少なくとも大赤字ではないのだし。
    在籍期間がかなり短い方は対象外となる可能性はあるがこれは致し方ないでしょうか。
    そもそもボーナス自体
    利益の還元、賃金の後払い的性格との2つの意見がありそれが平行線に思えます。後者だと退職金も含むでしょうか。
    ボーナスや退職金を一切なくして全て毎月の給料として平準化や年俸制を導入しているところもあるようですが今の日本では一般的ではないと思います。
    かといって利益によって毎回極端に変動する仕組みでよいかといえばそれは疑問です。

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