松屋製材跡:清崎に響く水車と蒸気の音
2026年9月7日
清崎の地には、明治の近代化とともに地域の産業を切り拓いた先人たちの情熱が眠っています。緑と、清流がせせらぐ静けさの中に、かつて発展の原動力となった活気が蘇ります。
水車が回る清崎初の製材所
松屋製材の増岡長太郎は、明治34年頃にこの地で製材の事業を興しました。当時の記録によれば、入り村井堰から導水する用水を改修し、勢いよく回る水車の動力で丸鋸を動かして木材を切り出していたと伝えられています。
これが清崎における最初の製材所であり、山深き奥三河の豊富な木材資源を生かす新たな一歩となりました。水煙を上げて力強く回る木製水車の音は、集落に新しい時代の到来を告げる誇り高き響きであったに違いありません。
蒸気の力で地域を支えた最先端の製糸場
さらに古資料『工場通覧』を紐解くと、増岡長太郎は製材業に先立つ明治33年7月、「丸い(〇の中に『い』の文字)」という屋号で製糸工場を創業していたことが分かります1。
当時の記録には男性2名、女性26名の職工が働いていました。そして、公称馬力4の蒸気機関2基を備えていたと記されています。決して巨大な工場ではありませんでした。しかし、蒸気の力を取り入れた製造ラインは、当時の奥三河エリアにおいて時代の先端を走る先進的な試みでした。地域の産業を興し、人々の暮らしを支えた先人たち。そのことは今も街道の記憶として静かに息づいています。
松屋製材跡の画像



参考文献
- 清崎みて歩きガイド.令和8年6月.
- 工場通覧 明治37年 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
- 全国林材業者総覧 昭和31年度版 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
- 設楽町昔談 : 伊藤晃回想録 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
