毘沙門堂の石仏群:人々と馬の平安を見守る祈りの場
2026年9月1日
設楽町清崎の毘沙門堂の境内には、十数体の石仏と3基の供養塔が静かに安置されています。
かつてお堂の前に伸びていた伊那街道は、ここから与良木峠を越えて方瀬や滝上を通り海老へと至る道でした。あるいは清崎から田口、八橋を経て津具村、折元峠へと向かうなど、旅人や行商が行き交う山深き難所として知られていました。
県道改修が紡いだ石仏たちの集いの地
明治9年、太政官達第60号によって県道の基準が定められます。それによると、小坂井村から長野県の伊那郡界に至る約68キロメートルが三等県道へと指定されました。
これに伴い大規模な道路の改修や拡張が実施されることとなりました。そして、それまで険しい街道沿いや路傍にひっそりと佇んでいた石仏や供養塔が、この毘沙門堂の境内へと大切に集められることとなったのです。
街道の安全と命への感謝を刻む観音像
境内の中央に深く美しい彫りを残す庚申塔や、聖観音・如意輪観音・十一面観音を刻んだ一石三観音塔、西国巡礼塔が祀られ、その左右には馬頭観音像が整然と並んでいます。
険しい峠道や長旅の途上で、怪我や病、疲労によって命を落とした馬たちの供養。そして旅立つ人々の道中安全を願う人々の想いが、多くの馬頭観音に込められました。中には道標としての役割を果たしていた像もあり、今も清崎の高台から、旅ゆく人々の無事と地域の平安を優しく見守り続けています。






参考文献
