本長篠駅:駅名が紡ぐ奥三河の鉄道史、旧田口鉄道の分岐駅の歩み
2026年7月4日
JR飯田線の「本長篠駅」は、かつて奥三河の山間地域を走り抜けた「田口鉄道」の起点であり、また歴史的な分岐駅でした。田口鉄道は、ここから終点の三河田口駅までを結んだ全長22.6kmの路線でした。昭和4年(1929年)にまず本長篠〜三河海老間が開通し、昭和7年に全線開業を迎えました。
昭和43年(1968年)に廃止されるまでの約40年間、本長篠駅は山間部の人々と街を繋ぐ重要な玄関口として機能し、そして廃線から半世紀以上が経った今も、その周辺には当時の遺構が名残を留めています。
時代の波と路線の変遷を見つめてきた歴史
本長篠駅は、周囲の路線や経営母体が入れ替わる激動の時代を見つめてきました。大正から昭和初期にかけて、この地域では複数の私鉄がひしめき合っていました。昭和12年には豊橋・辰野間の直通運転が開始されます。その後、昭和18年(1943年)の戦時買収によって周辺の私鉄4社が国有化され、現在の「飯田線」が誕生しました。この時、本長篠駅から伸びる田口鉄道は国有化されなかったものの、運転管理は国鉄(鉄道省)に委託されることになり、のちに「豊橋鉄道田口線」へと姿を変えていきました。
4社の私鉄が統合して生まれた「JR飯田線」
- 豊川鉄道:吉田(現・豊橋)〜長篠(現・大海)[明治31年全通]
- 鳳来寺鉄道:長篠(現・大海)〜三河河合[大正12年開通]
- 三信鉄道:三河河合〜天竜峡[昭和12年開通]
- 伊那電気鉄道:天竜峡〜辰野[昭和12年全通]
鉄道の発展とともに変わり続けた「駅名」の記録
本長篠駅の歴史の深さは、その「駅名の変遷」によく表れています。
- 鳳来寺駅(開業当初):当初はこの地域の中心的な駅として名付けられました。
- 鳳来寺口駅:田口鉄道が開通し、鳳来寺の参道入口に新たな「鳳来寺駅」が新設されたため、分岐駅であるこちらは「入り口」を意味する名前に改称されました。
- 本長篠駅:昭和18年の国有化にともない、現在の名称へと変更されました。
秘境駅路線の主要駅として、いまも地域を支える
現在の飯田線は、全国屈指の「秘境駅」が集まる路線として鉄道ファンから高い人気を集めています。本長篠駅は、激動の歴史のなかで何度もその名を変えながらも、奥三河の交通の要所としての役割を片時も手放すことはありませんでした。そして今日も変わらず、この地域に暮らす人々の移動にかかせない駅として足元を支え続けています。






参考文献
鳳来町誌 田口鉄道史編 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
東三河めぐり – 国立国会図書館デジタルコレクション.