平井八幡社:洪水と試練を越えた「社供神」の物語

豊川放水路に架かる新橋から続く県道沿い、豊川市平井町水戸田平井八幡社は鎮座しています。かつて菟足神社平井柏木浜から現在の宮脇へと遷座された際、その跡地に社を建てて菟上足尼命を祀ったのが、この社の始まりと伝えられています。

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「社供神」が物語る、土地の記憶と激動の変遷

この社の歴史の深さは、現存する最古の棟札(天文21年/1552年)に刻まれています。そこには「奉造建菟足大明神之勧請社頭一宇社供神」と記されており、もともとはこの土地の古い神である社供神シャグチ御左口神)を祀っていたことがうかがえます。

天文年間の大洪水により社殿が流出するという悲劇に見舞われましたが、石の御神体であった社供神はその重さゆえに流出を免れました。再建の際、菟足大明神の分霊を勧請して併せ祀ったことが、現在の信仰の礎となっています。その後、時代とともに「社供神宮」や「下八幡宮」と名を変え、明治17年に現在の八幡宮へと至りました。

「風祭り」を彩る豪華絢爛な大行列と笹踊り

平井八幡社は、菟足神社の例祭「風祭り」において欠かせない役割を担っています。祭りの三日目、平井八幡社で整えられた御鉾大注連縄、そして勇壮な笠鉾が、大榊を先頭に菟足神社を目指して大行列を成します。

なかでも見逃せないのが、色鮮やかな衣装を纏った子どもたちによる「笹踊り」です。色鮮やかな衣装と、それとは対照的に、打ち鳴らされる3つの太鼓の絶妙な間(ま)。優雅かつ軽妙に舞うその姿に魅了されます。

境内には御嶽講社ゆかりの御嶽神社も祀られ、地域の信仰と伝統が幾重にも重なり合う場所となっています。

平井八幡社

平井八幡社の地図・行き方

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参考文献
小坂井町誌 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
神社を中心としたる宝飯郡史 – 国立国会図書館デジタルコレクション.
豊川市教育委員会編.令和2年.『新版 豊川市の歴史散歩』.豊川市.

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