やっぱりチョコレートは進駐軍から貰うもんだ
冷蔵庫の中に、もうずいぶん前のチョコレートがあった。
賞味期限が2012年、その5年間のことをその冷蔵庫の前で少し考えていた。
目の中に満月が入った瞬間に涙が少しこぼれた。ため息がもれてそこから想い出があふれ出した。風が1メートル先のドアをノックすると過去がボンヤリと現れた。
ボクはそのチョコレートをテーブルの上に置いて少しだけかじってみた。それがどういう味だったかということを、ボクは知らないまま、こんなものだったかもしれないと残りをかじった。
きっとこんなものだったのだろうと思った。そうして、きっとこんなもんだったんだと思うことにした。
2012年からもボクたちはコイビトだったのだけれど、それにいったいどういう意味があったのだろうと考えていた。いったい人はどうして恋をしたがるのだろうかなんてことも考えてみた。ボクがここに住むことになった理由だってその恋のせいで、それほど人を動かす力を持っているとしても、シアワセとは別のことのように思う。
ボクがここでシアワセに、そうしてコイビトがここでシアワセになったかというと、少し疑問なのだ。ボクたちは本当は出逢わなければよかったのかもしれないと思った。シアワセが恋の目的だとするならば出逢わないほうがシアワセだったようにも感じる。
残りをチョコレートをそのままゴミ箱に捨てた。少し乱暴に捨てた。甘い香りがしたのだけれど、それはもう残骸になってしまって、きっと明日の朝にはゴミ収集車の中で、腐った残飯や、薄汚れた塵芥や、糞尿や精液と混じり合って、愛とか恋なんて痕跡さえもなくしてしまう。
ドアを開けてすっかりと部屋の空気を入れ替えた。ボンヤリと生きていこうと思った。すべての行動はいい加減にボンヤリとやり過ごすことのほうがシアワセになれるんじゃないのかと、そう思ったんだけれど・・・。
ブラタモリを見ながら・・・。