昧耶稲荷(まやいなり) – 「マヤ稲荷」の伝説
馬の歴史と深く結びついた、三社構成の古社
JR三河大塚駅の北側、蒲郡市大塚町笹山の山中に静かに鎮座する昧耶(まや)稲荷。この神社は、市道沿いの「里宮」、山中の「社殿」、そして山頂近くの「奥之院」の三社で構成されています。
江戸時代、この地域では馬の飼育が盛んであったことから、「馬屋(まや)」が「まや」に転化したと言われています。『大塚・相楽ふるさと博物館』にも、かつてこの近辺で草競馬が催されていたという活気ある歴史が記されています。
里宮から奥之院、そして歴史を語る桃山台へ
参拝は市道沿いの里宮から始まります。獣除けの金網を抜けて奥之院への参道を登っていくと、左手に馬頭観音が祀られた祠が現れます。さらに進み、鳥居が並ぶ階段を上がると、手水舎や木製灯籠、絵馬掛けを備えた社殿に到着します。鳥居に記された「まやいなり講」の文字からは、往時の賑わいが偲ばれます。
社殿からさらに山頂へ向かうと、平成15年に建立された「奥之院」の小祠が見えてきます。祠の背後には、守護するように鎮座する対をなす石組みがあります。また、傍らには『蒲郡風土記』に「枝渡数十間」と記されたヤマモモの大木がそびえ立っています。
さらに登った先には石組みの遥拝所跡あります。ここから桃山が見えることから「桃山台」と名付けられました。戦前は地域の若者が相撲や銃剣術に励んだ場所です。また、奥之院前の広場は大正初期に作られた明治天皇陵の遥拝所と言われています。
欲と約束を戒める「マヤ稲荷」の伝説
神社には、約束の重さを伝える「マヤ稲荷」の昔話が語り継がれています。
- 願掛け: 貧しい太郎作という男が、「大金持ちにしてくれたら金の鳥居を建てる」と願掛けをしました。
- 約束破り: 願いが叶って大富豪になった太郎作です。しかし、「金の鳥居はもったいない」と、約束を破って木製の鳥居を建ててしまいます。
- 報い: その後、太郎作の商売は急激に傾き、元の貧しい暮らしに戻ってしまいました。
この昔話は、約束を違えることへの戒めに加え、富への執着を捨て、見返りを求めない純粋な信仰の大切さを今に説いています。
現代に息づく信仰
境内の案内板には「商売繁盛を叶え、贅沢を戒める神様として信仰が篤い」と記されており、今でも市内外から多くの参拝者が訪れると言われています。駅からほど近く、境内からは三河湾の美しい眺望を楽しむことができる、地域の隠れた名所です。
昧耶稲荷の画像









昧耶稲荷の地図・行き方
参考文献
伊藤天章.『蒲郡風土記』.蒲郡新聞社.昭和51年.
「マヤ稲荷」広報がまごおり 2011年9月号.
「マヤ稲荷」は「ぬすまれた観音さま| がまごおり電子図書館」で読むことができます。
