稲村神社のシャシャンボ – 石段の傍らで語り継ぐ古事記の記憶

蒲郡市西浦町に鎮座する稲村神社。その静かな参道を一段ずつ踏みしめながら進むと、石段の右側、ちょうど26段目付近に、一風変わった名を持つ樹木が姿を現します。それが蒲郡の名木50選の第48番に数えられる「稲村神社のシャシャンボ」です。傍らには市の標識板も設置されており、歴史ある神域の一部として大切に守られています。

「縦じま」が教える、控えめな名木の正体

シャシャンボはツツジ科スノキ属の常緑樹で、一見すると神事に使われるヒサカキにも似ていますが、その見分け方は幹に隠されています。幹に刻まれた、くねるような独特の「縦じま模様」こそがシャシャンボの証。控えめな佇まいでありながら、その肌には長い年月を生き抜いてきた樹木特有の表情が刻まれています。

『古事記』の時代から続く、甘酸っぱい生命の営み

この木の歴史を紐解くと、驚くべき古の世界へと繋がります。漢字では「小小坊」や「南燭」と書かれ、その語源は『古事記』にも登場する「烏草樹(さしぶ)」が転訛したものと言われています。初夏には白い釣鐘状の可憐な花を咲かせ、11月頃には紫黒色の小さな実を結びます。その実は甘酸っぱく、古くから生食できる「森の恵み」として親しまれてきました。悠久の時を超え、聖域で毎年繰り返される実りの営みに、神秘的な生命の力強さを感じ。

石段で見つける、二つの名木の物語

このシャシャンボを見つけた後、さらに石段を登りきった右側には、第49番の「稲村神社のシイ」が堂々たる姿で控えています。注意深く探さなければ見落としてしまいそうなほど風景に溶け込んでいるシャシャンボ。しかし、一度その存在に気づけば、26段目の石段は、古代の伝承と現代の景色を繋ぐ特別な場所に変わります。11月の実りを楽しみに、再びこの階段を訪れてみるのも一興かもしれません。

  • 樹目 シャシャンボ(ツツジ科)
  • 幹周 0.67メートル
  • 根回 0.84メートル

稲村神社のシャシャンボの画像

蒲郡の名木50選マップ

Googleマップ 稲村神社

神社へは、塩柄公共駐車場から万葉の小径の入口からが便利です。

参考文献
森林総合研究所 九州支所/シャシャンボ

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