議案会第17号と豊橋市議会の再議について
豊橋市議会議案会第17号を「議会の権限を超え又は法令に違反する」という理由で、長坂市長が市議会に再議を求めました。このことについて、少し考えてみます。
議案会第17号とは
その前に、この議案会第17号について概略します。
これは「豊橋市議会の議決すべき事件を定める条例の一部を改正する条例」という条例案でした。地方自治法は、契約については「議会の議決が必要」と規定しています。しかし、解除についての定めはありません1
ところが、「契約も解除も議会が決めるもんね」という条例を作ろうとしたのが、豊橋市の自公連合グループです。これ、なんとなくもっともらしく聞こえるんです。しかし、締結も解約も議会が決める、となると、今度は議会に権力が集中しませんか?
また、解除する時間も冗長化します。それは、解除したくてもできない状況の発生を意味します。つまり、損失の増大化にもなりかねません。
再議の理由
その前に、この契約の解除については、地方自治法に違反するようです。(後述しますが、違反を認識しての上程であった可能性が高く、それが「法の抜け穴」発言です)
それが再議の理由「法令違反」として、市長提出の「1月市議会臨時会議案概要説明書」にも明記してあります2。
「契約の解除に関すること。」は、法令が明瞭に長その他の執行機関に属する権限として規定している事項及び事柄の性質上当然に長その他の執行機関の権限と解さざるを得ない事項であることから、「議会の議決すべきもの」に当たらない。
そのため、議案会第17号に係る議決は、議会の権限を超えた事項について定めた議案の議決であり、また、議案会第17号は、法令に違反する。
このことについては、12月26日の住民投票やるやる詐欺議会でも、鈴木議員の質問に対して「議会が長の行った契約の解除については、議決はできないと解釈すべき」という答弁を豊橋市の総務部長が示されました。(地方自治法制研究会編集の『地方財務実務提要第1巻』を引用されていました)
立法事実もありません
議案第119号について
次に、この議案会第17号の提出趣旨ですが、これは議案第119号「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例の一部を改正する条例について」に対してのものです。3
図1 議案第119号 令和6年12月豊橋市議会定例会
この条例は、議会の議決に付すべき契約の額を、従来の「1億5000万円以上」から「2億2500万円以上」に引き上げたものです。改正の理由は、「資材価格の高騰等により」価格も上昇したので議決に付すべき契約額も上げる、というものでした。
立法事実が存在しないこと
ところが、この改定で「市長の専決事項の権限が大きくなり、議会によ る議決権限の範囲の新小につながっている」ので、契約解除も議会の議決が必要」として、議案会第17号を提出したのです。
これも、もっともらしく聞こえるんです。しかしよく考えると、自分たちで金額を上げといて、「それは困る」と言っているのです。(「契約額の引き上げは、商工会議所からの要望」だと記憶しています)
さらに、市長の権限が大きくなるといっても、そもそも法で決まっていることであり、条例で決めた金額なんです。(その金額を引き上げたのも議会です)という、自縄自爆的なギャグなんです。
法の不備、法の抜け穴
ただ、ギャグではなくタチが悪いことに真面目なんです。地方自治法で規定されている法令を、自分たちが策定する条例で反故にしようとしているのです。これが、斎藤ひろむ市議の質問に対して、提出議員が「法の抜け穴」「法の不備」と答弁したことなのです。つまり、地方自治法の抜け穴(法の不備)を突いて、法律違反しようとしているのです。
これでは、法の安定性が失われます。さらに、社会が混乱します。しかし、提出議員は、まるでゲームの裏技を見つけたように喜んでいるようです。(豊橋市議たちの態度が幼すぎるとも感じます)
このような理由から、議案会第17号の再議を求めたのです。
提出経緯に異議あり
今回、さらに問題なのは、豊橋新アリーナの契約に関係しているからです。議案第119号に対してではなく、長坂市長が行った「解除」の決定に対しての対抗策だということが明白だからです。
なぜなら、議案第119号は4月1日に施行されるからです。つまり、2億2500万円になるのは4月からなんです。それに対応する条例を施行前に急ぐ理由はなんなんでしょうか?
また、この新アリーナ建設については、契約過程で不正行為がありました。こうしたことを含め、賛否を問う住民投票の請願もありました。さらには、市長選前の契約を止めるような議会での議論もありました。12月議会でも住民投票条例を全ての会派が提出しました。
ところが、自民党・公明党、まちフォーラムは、住民投票条例提出を撤回したのです。これで3度住民投票を否定したことになります。
多数派独裁議会
ほんとうに、怖い議会なんです。自分たちの思う通りにやる。不正をしてでもやる。できなければ、法の不備、抜け穴をついてまでやる。住民投票なんて必要なし。議会が決めればそれでヨシ。それは正しいのでしょうか?
おそらく、自公連合グループは不信任案まで考えているでしょう。そして市議選。もう一度不信任案提出…。新アリーナ建設の現行案にこだわるのはなぜなんでしょう?もう一度、不正のない市民の声を聞いた上で計画をすれば良いのではないのでしょうか?
それだけの話なのに…と思うのですが?ほんとうに怖い豊橋市議会の話…だったっけ?
図21月市議会臨時会議案概要説明書4


- 地方自治法96条1項には地方議会での議決事項15件が定められています。地方議会制度の概要⑤ ~議会の議決権~:総務省
- 1月市議会臨時会議案概要説明書
- 令和6年12月市議会定例会概要説明書(PDF/378KB)
- 市議会臨時会議案概要説明書:豊橋市議会