ねんりんピックとライドシェア
ねんりんピックとは正式名称を「全国健康福祉祭」と言い「高齢者を中心とする国民の健康保持・増進、社会参加、生きがいの高揚を図り、ふれあいと活力ある長寿社会の形成に寄与する」イベントです1。
2024年度の36回大会は鳥取県で行われました。この大会ではイベント対応型の日本型ライドシェアを行いました。結果的に、利用者数は「伸び」なかったそうです。
さて、利用客数が伸びなかったのは「周知不足」が原因なのでしょうか?そして、地方での超特需に日本型ライドシェアは有効なのでしょうか?少し考えてみました。
ねんりんピックでの問題点
タクシーという移動手段の問題点
鳥取県だけではなく今回のような特需があると、地方のタクシー利用には次のような問題が起きます。
- 予約ができない
- あてにできない
- 乗り場がない、分からない(流しがなく待機場所や配車での利用しかありません)
「予約ができない」ので「あてにできない」ことは移動手段としては致命的な欠点です。さらに、このような特需時にはタクシー会社の配車は「予約を受けない」「配車しない」「乗り場誘導」という方法になります(特に初めての利用者は「ご用意できない」という定型文が使われます)。なぜならば、配車事故になるからです2。
つまり、この記事のように「ご用意できる状態じゃなくて時間がかかっております」になります。そして、「ご予約でのご利用はお断りしております。乗り場からお乗りください」も加わります。その結果、乗り場で並んで待つということなります。(それを避けるために余剰や冗長性を持たせることが困難なのでライドシェアという発想になるのですが)そして、いつ来るか分からないタクシー待ちの行列ができるというわけです。
TottoRideShare(とっとライドシェア)の問題点
今回のこのイベント対応型ライドシェアにも問題点があります。
- 許可車両数が少ない(71台)
- 配車アプリ「GO」のみ
- 雇用方法
- 時給制
- 短期間(5日間)
- 長時間の研修(10時間)
- 日本型ライドシェア
19市町村の会場に許可車両が71台しかありません。その許可車両に合わせて募集人員の目標数も80人でした。仮に、この目標数を達成していたとしても「伸びず」だったでしょう。
さらに、配車アプリGOしか使えません。「タクシーを補完する目的」3だったこと、さらに、日本型ライドシェアという台数を含めた制約も原因です。このことは、もともとそれほど期待していなかったのではと考えれれます。
それに加えて、雇用方法です。時給1200円という金額の妥当性も疑問を呈するところです4。この条件で応募するでしょうか?このようなことから、(日本型ライドシェアよりは)公共ライドシェアを使っての募集のほうが適していたのではないでしょうか。そして「ボランティア募集」のほうが応募があったのではないでしょうか?
会場が広範囲という問題
会場が広範囲ということも、タクシーの利用と供給には不都合です。鳥取県全域19市町村に71台の増車です。これは「補完」という目的には十分な車両数ですが、「供給」には程遠い車両数ではないでしょうか?
このことがすべてを物語っています。つまり、「中国地方初」とか「イベント型ライドシェア」は「流行」とか「NOWでヤングな」とか「スタバがないがスナバはある」的なことではないでしょうか?
「伸びず」に「タクシーが出払う」状況になった理由は、このような「形だけのライドシェア」「はじめにライドシェアありき」だったからでしょう。そもそも、日本型ライドシェアで補完したところで、大会の移動を支えることはできません。タクシーという移動手段では困難です。大型イベントには大量輸送しか勝たん、のです。
そしてレンタカー
次に、この記事に「個人的にレンタカーを借りて移動した。もし知っていれば、検討したかもしれないですね」とあります。
しかし、もし知っていても、レンタカーを利用したのではないでしょうか。なぜなら、タクシーではコスパが悪く、不便だからです。さらに、広範囲、高速道が無料、となると、レンタカー利用が最適解ではありませんか?
チョイソコ11人乗り
タクシーのような1台1組という非効率的な移動方法よりも、こうした大型イベントでは11人乗りのジャンボタクシーでの乗合旅客運送が適しています。例えば、チョイソコのシステムを利用して乗合運送をするほうが効率的です。
わしが考える地方の超特需時の移動に、県民全員参加型ライドシェアがあります。期間中はすべての自家用車がライドシェア車両になります。流し運行もありなんてことになると、50万人の来客数に対応できるかも、と思います。(乗車拒否禁止、とも考えましたが、そこまで強制力を持たせると…)
というよりも、大会そのものは、バスでの運行で間に合ったんですよね?選手や関係者が会場に着かなかったということもなかったのでしょう。そして、タクシー会社も「すべてのタクシーが出払う状態」になり特需景気がありました。
困るのは地元住民
ただ、地元住民が困ったのでしょう。それでなくても、タクシー不足は慢性化し問題化しています。「タクシーが出払う状態」になった結果、地元住民が移動できなかったのではないでしょうか?
とにもかくにも、ライドシェアは魔法のランプではない、ということです。それに、タクシー(日本型ライドシェア)は、あまりにも非効率な輸送手段なのです。さらに、地方ではねんりんピックの選手と同年代の人たちの移動の足が奪われる、という事実こそ、この大会では問題ではないのでしょうか。
県“鳥取型ライドシェア”立ち上げ目指す 事業者と住民が連携|NHK 鳥取県のニュース
- 全国健康福祉祭(ねんりんピック)の概要|厚生労働省
- 混雑時やイベント会場の配車では「お客様間違い」が起きやすく、時間に間に合わなかった等の配車事故につながる
- 鳥取県で今秋開催される「ねんりんピック」期間中の日本版ライドシェアを許可しました 国土交通省中国運輸局
- とっとライドシェアTottoRideShareドライバー募集