タクシー不足 もうひとつも原因
タクシー不足は、コロナ禍を起点に減り続けた運転手不足が原因とされています。しかし、原因は複数あり、その複数の原因がさらにタクシー不足を悪化させています。そのことについて再度考えてみます。
タクシー不足には次のような原因と問題が考えられます。
- 運転手不足
- アプリ配車による需要増加
- アプリ配車増加による流し・駅や乗り場への供給不足
- 実車率急増による実働率低下
- 2024年問題
タクシー不足の原因
運転手不足
1については、少しずつ増えているようですがコロナ禍以前には戻ってきません。2024年6月末のデータでは、15か月間で108%増員できたということです。しかし、2020年3月31日比で90%、5799人マイナスです。(図1)1
図1 タクシー運転手充足率
アプリ配車による需要増加
配車によるタクシー利用者が増加していることもタクシー不足の原因になっています。
図2 タクシー配車回数推移(東京交通新聞掲載の資料を元に、Claudeが作成しました)
タクシー不足に加え、アプリ配車による利用が増えたため、3の「流し、駅の待機場所への供給不足」が発生している、とも言えます。
実車率急増による実働率低下
- 運転手の賃金=営業収入
- 営業収入=運行回数 × 運賃
- 運賃=実車時間と実車距離
という賃金の法則があります。つまり、稼ぐには実車時間と実車距離の効率化を行います。時間や距離に対する実車率を高くする、簡単にいうと暇な時間をなくすということです。
タクシー不足と配車の増加はその実車率を高くします。しかし、実車率の増加は、実働率の低下をもたらします。「お腹いっぱい」になると、それ以上は動きません。(逆に、実車率が低くなるとタクシーの長時間労働が問題化します。そのために適正車両数、台数規制が行われます)
このように、タクシー不足がさらなるタクシー不足を起こしている、というのが現状なのです。
少し詳しく書いたものがありますので、よろしければ読んでみてください↓
もうひとつの問題
2024年問題ではない労働時間問題
タクシーは長時間労働だと言われます。しかし、事業所外で自発的な営業方法です。それは、視点を変えると「短くもできる」ということです。それに、勤務シフトは法定労働時間内の会社も多いようです。(私がいたところも月172時間以内でした)
勤務時間が月間170時間、そして事業所外、自発的であるため、休憩時間を長く取ることも可能です。さらに、前項で述べたように、売上の増額が労働時間を短縮するという傾向により、実働時間が短くなります。
これが、他の自動車運転事業と違うところです。さらに、先日驚くべき事実を耳にしました。それは、早退が自由でペナルティがない会社がある、ということです。
事業所外で自発的な営業方法、かつ自由な労働時間…。さらに、配車を受けなくても良い、というような風潮。これでは、タクシー不足はますます解決が難しくなります。
また問題はそれだけではなく、実働率の計算に瑕疵が生じます。それは適正車両数などの計算にも影響を及ぼします。つまり、不足充足が曖昧なのです。
実は、その原因も出来高制歩合給にあり、これは業界の宿痾…なのです。