準特定地域の指定基準について
「準特定地域における輸送実績」に続いて、準特定地域の指定基準について考えてみます。
というのも、前回(今朝ですが)の投稿は「日車営収」にのみ着目し、「日車実車キロ」を見ていなかったからです。その理由は、準特定地域の指定基準にあります。
- 日車実車キロ又は日車営収が、平成13年度と比較して減少していること
- 日車実車キロ又は日車営収が、平成13年度と比較して10%以上下回っていること
準特定地域の指定基準について
準特定地域の指定基準は次の通りです1。
以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する営業区域を準特定地域として指定する。
- (1)人口 10 万人以上の都市を含む営業区域であって、1から3までのいずれかに該当する もの。
- 日車実車キロ又は日車営収が、平成 13 年度と比較して減少していること。
- 前5年間の事故件数が毎年度増加していること。
- 前5年間の法令違反の件数が毎年度増加していること。
- (2)人口 10 万人以上の都市を含まない営業区域であって、1から3までのいずれにも該当 するもの。
- 人口が概ね5万人以上の都市を含むこと。
- (イ)から(ハ)までのいずれかに該当すること。
- (イ) 日車実車キロ又は日車営収が、平成 13 年度と比較して 10%以上下回ってい ること
- (ロ) 前5年間の事故件数が毎年度増加していること。
- (ハ) 前5年間の法令違反の件数が毎年度増加していること。
- 当該営業区域を含む都道府県知事又は市町村長から、国土交通大臣に対して、当該地 域を指定することについて要請があったこと。
まず、これは「指定基準」です。そして「準特定地域の指定解除基準」はありません。つまり、「市場の状況や流れを考慮して」という仮説も成立するわけです。
次に、「又は」の解釈です。この接続詞「又は」は、「AかBのうちいずれか」です。よって、「日車実車キロ」か「日車営収」のうちいずれでも良いのです。さらに付け加えると、今日の市場の状況や問題点から「日車営収」に重心が置かれると考えられます。
規制改革会議の見方
特に、ライドシェア推進、規制改革会議の人たちは、ここしか見ないでしょう。それには、次のような理由が考えられます。
- 「又は」の解釈
- 地域指定され活性化適正化の結果効率化された(実車距離の減少、営収の増加)
- 日本型ライドシェアの存在(矛盾と欺瞞)
- 適正車両数と所有台数の差(乖離率)
- マッチング率とタクシー不足(供給過剰の正当性)
つまり、業界がタクシー不足を認めながら、供給過剰とはなにごとだ、と…。そこから、この改正タクシー特措法2の矛盾と欺瞞をついてくるということは想像に難くはありません。
指定基準の変更
そして一部に声のある「指定基準の変更」ですが、例えば「(1)の1」を変更する必要があるのでしょうか?(「又は」です)それに「指定基準」であり「解除基準」ではないので、「実情に合った方策でアジャイルに」と河野太郎氏は言います。それはその通りで、前項で述べたとおり、矛盾も生じます。
つまり、変更なしで解除できる、というわけです。
都市・周辺部で解除されない場合
タクシー業界にとって、解除されない場合、表面上は「よかったね」になるかもしれません。しかし、ライドシェア新法は推進派の思惑通り着々と進みます。
それに、推進派(規制改革会議)は、指定基準の変更と現行法の矛盾を指摘し始めます。例えば、乖離率です。「供給過剰と言いながら、適正車両数の1.5倍ものタクシー車両を抱えているではないか」「形骸化されている」「誰のための公共交通なのだ」「利用者起点で」そして「既得権益」となるに決まっています。
その上で戦略的にSNSで世間に問います。なにしろ川邊氏がいるし…。シナリオライターがいます(きっと)。
解除し利用者起点のタクシーへ
タクシー業界にとっても地域指定されたほうが有利だと考えられます。それに、今さら解除するしないは問題ではありません。「タクシー不足」だから「ライドシェア」なのだし…。
また、解除するしないに関係なく物事は進捗します。それがあの人たちのやり方なんですよ。ということもあり、戦略をもう一度立て直す必要が、と思ったところで、もともと戦略なんかないのが業界でしたか…?
以上、2回続けてのどうなる順指定地域でした。
図1 準特定地域における輸送実績