準特定地域における輸送実績

タクシー事業の準特定地域における輸送実績(速報値)が公表されていました。この輸送実績をもとに、準特定地域の再指定、解除、さらに適正車両数を算出します。

この輸送実績は、各事業者が毎月集計し地方運輸支局へ提出しているものです。また、指定地域については、「3年を超えない範囲で期間を定めて」見直しが図られます。

今回は、この準指定地域と令和5年度の輸送実績を概観してみます。

タクシーの準特定地域

準特定地域に指定される理由

簡単に言うと、タクシーが多く(供給過剰状態)なると、サービスの劣化、交通事故の増加、環境悪化等を引き起こす恐れがあるからです。(これは、タクシーが多いことだけの問題ではありません。しかし、現状では起きます。そして、過去には起きています)

指定される根拠法は、改正タクシー特措法(特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)です。

改正タクシー特措法、準特定地域の指定
図1 改正タクシー特措法 第三条の二 準特定地域の指定

準特定地域に指定されると

地域指定されると、次の制限がかかります。

  • 新規参入は許可制
  • 増車は認可性
  • 公定幅運賃制

改正タクシー特措法 改正ポイント概略図
図2 改正タクシー特措法 改正ポイント1

これにより、(許可制ですが)新規参入は困難になります。また、増車についても同じです。そして公定幅運賃制度により運賃決定が制限されます。この制度は、「国土交通大臣が指定した運賃の範囲(公定幅運賃) の中で、事業者が運賃を選択し、届け出る仕組み」2です。逆の見方をすると、競争ができないということです。さらに、収入が固定されるので、経営の適正化、活性化が求められる、ということです。

タクシー公定幅運賃制度
図3 タクシー公定幅運賃制度

まとめると、タクシーが供給過剰になる恐れがある地域を指定する。そして準特定地域に指定されると、新規参入(開業)や車両を増やすことができない。さらに、運賃等の規制を受ける。と言うことになります。

地域指定されるメリット

この制度は、既存のタクシー事業者には有利に働きます。例えば、次の理由が考えられます。

  1. 新規参入ができない(≒独占市場)
  2. 増車しなくても車両は余ってる(実働率も運転手充足率も低い)
  3. 運賃競争がない(情報の非対称性を保てる)

このようなことから、指定された環境の中で輸送実績が好調なら言うことなし、なのです。

準特定地域における輸送実績

さて、今回発表された「準特定地域における輸送実績」ですが、多くの地域で基準となる平成13年(2001年)を上まっています。したがって、指定解除される地域も多いはずです。さらに、タクシー不足や日本型ライドシェアの促進から、解除基準も緩くなると考えられます。

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準特定地域における輸送実績 四国運輸局、九州運輸局、沖縄総合事務局管内

図4 準特定地域の日車営収令和5年度・平成13年度

準特定地域における令和5年度速報値のデータより田原作成

指定解除の基準

特定地域指定解除の明確な基準というのはないので、指定基準から判断します。

準特定地域の指定基準
図5 準特定地域の指定基準3

このことから、解除の条件は次のようなると考えられます。

人口10万人以上の都市を含む営業区域

  1. 日車営収が平成13年度と比較して増加していること
  2. 前5年の事故件数が減少していること
  3. 前5年の法令違反件数が減少していること

人口10万人以上の都市を含まない営業区域

  1. 日車営収が平成13年度と比較して10%以上上回っている
  2. 前5年の事故件数が減少していること
  3. 前5年の法令違反件数が減少していること

つまり、今回発表された準特定地域における輸送実績で、令和5年度の日車営収が平成13年より上回っている地域は解除される可能性があるということです。

準特定地域指定解除後のタクシー業界

新規参入者による市場の独占化の始まり

参入規制、増車の規制が解けタクシー車両を増やしても、運転手がいません。実働率、運転手充足率はコロナ前には戻りません。その環境で、これまで通りの事業を行います。日銭は入るし、労働集約型産業、人に手をつけるでしょう。例えば、歩率を下げ人件費を削る。

ところが、新規に参入する人が現れます。そして増車をし、その地域の市場を独占しようします。例えば、newmoのように資本力を持ってタクシー事業を買収する新規参入者も登場するでしょう。

ライドシェアの始まり

また、地域によってはタクシー不足は解消されません。このことは事業者にとっては好都合なのです。が、しかし、その考えが不幸の始まりです。タクシー不足による実車率増加により利益が出ているだけなのです。そして、準指定地域が解除になりました。

次は、解除後のタクシー不足を理由に、ライドシェア新法によるライドシェア解禁が起きます。なぜならば、タクシー業界では解決できないからです。

タクシーの終わりの始まり

この秋から、タクシー業界は一気に変わっていきます。大阪で起きたことを見てください。

指定解除が終わりの始まりになります。その覚悟で事業を進めていかないと、会社は倒産しますよ。いえ、業界消滅の危機とも言えます。

でもね、タクシー会社は人材不足ですよね。経営者も2代目3代目が多いんですよ。出来の悪い経営者は、自分より出来る人を切り捨て、身を守ります。

これまで、ぬるま湯に浸かっていた人には、危機感もないでしょう。あったとしても、伝家の宝刀「売り逃げ」「夜逃げ」をするでしょう。と、指定解除で、安全装置が解除される時でもあります。

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タクシー運転手不足とオレ

  1. 特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法の 施行状況及び効果について(概要) 国土交通省
  2. タクシーの運賃制度について
  3. 準特定地域の指定基準 国土交通省

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