uberが想定しているもの
uberやliftyが想定しているのは専業ドライバーではない。通勤途中のサラリーマンだったり、ドライブしている人たち、さらにギグワークで小遣いを稼ごうとしている人たちだろう。だから、ライドシェアの解禁は別問題として、タクシー業界がその労働条件についてとやかくいう必要もないと思う。
(何度も言うけれど)uberのないこの国のタクシー業界で働くボクたち運転手が人並みの賃金をもらって、人並みの生活を送っているのならば、何も考えずに反対もできる。しかし、そうではない。それゆえ、uberという黒船によって業界が変化するこを望んでいたりもする。積極的に反対できないのだ。
ライドシェアドライバーの収入
マサチューセッツ工科大学の「The Economics of Ride-Hailing: Driver Revenue, Expenses and Taxes (配車サービスドライバーの収入、費用、税金の経済学)」と題された研究で、「uberとlyftのドライバーたちの過酷な状況が明らかに」なんて記事が出ている1。
対象を労働者を専従労働者としている。しかし、uberやliftyが想定しているのはギグワーカーなのだ。
たとえば、
- 通勤途中のサラリーマン
- ドライブ中の人、
- 年金受給者、
- ボクたちのようなプロドライバーの通勤中や余暇に
なんて人たちを想定している。(していたはずだ)
集団で仕事をしたくないひと、サイドビジネスとか副職にと考えている人が副収入を得るには良い制度だと思う。年金受給者もだけれど、たとえばベーシックインカムとも親和性があると思っている。
交通空白地と運転手不足対策として
交通空白地域の増加やタクシー業界の労働力不足解消にも、必要なサービスではないのだろうか。
「車を買わなければならず、保険にも入らなければならず、ガソリン代も払う必要があり…そしてプラットフォームが請求する手数料は10%、15%、そして今や20%にも達しています。そして利用料金が競争相手に勝つために引き下げられて…ドライバーはコストは固定されているのに、収入は減少しています。率直に言えば、コストをカバーするために、より長い時間を車の中で過ごす必要があるのです」
だからこういった想定がそもそも間違っているんだってば……。
もうすでに車も買っていて、保険も入っていて、ガソリン代も払っている人たち。そういった自家用車が無駄に溢れている街で、交通弱者と交通空白地の人たち、そして貧しい人たちがタクシーという贅沢品のために移動できないのだ。
というか、これってボクたちタクシー運転手そのものだし。笑ってしまう。
lyftの広報担当者の1人が私たちからのコメント要請に対して、以下のように電子メールで回答した
「ドライバーの皆さまはLyftの成功を支える一部です。国内で順調に増え続ける数の方々が、lyftを収入を得るための柔軟な手段として利用なさっています。そして私たちはこれからもドライバーコミュニティと関わり、皆さまの成功をお手伝いします。研究結果に関してはまだ精査しておりませんが、ざっとみた限りでは疑問符のつく想定が行われているように思えます」
まあ、そういうことだ。
uberが想定しているもの
ユーチューバーやネットで広告収入を得ている人たちも「収入を得るための柔軟な手段として利用」している人たちなんだから、なにもuberやliftyだけが悪者でもなくて、すでにボクたちはギグエコノミーを「柔軟な手段」として利用している。
今のタクシー業界は、顧客にとって素晴らしいのでもなくて、運転手にとっても素晴らしいのでもなくて、ただタクシー会社にとって素晴らしいものだ。だからなおさら川鍋会長が「顧客にとって素晴らしい」とツイートするのなら、反対することもない。そう思うんだが。
サービス提供者のタクシー会社と運転手は別。正義は多面的だが、利益はいずれにせよ一面的、使用者が独占する。
そもそもボクはUberをサイドビジネス的に捉えているので、すでに車も所有していて保険も払っている一般ドライバーがサービスを提供するのを前提とすると素晴らしいシステム。 https://t.co/TxkG5ZxxTN
— 田原笠山 (@taha_ra) March 4, 2018
- MITの調査により、UberとLyftのドライバーたちの過酷な状況が明らかに MIT study shows how much driving for Uber or Lyft sucks | TechCrunch