カスハラ

タクシー運転手村瀬さん 1のカスハラ体験のインタビュー記事を読んで考えてみました。

元キャバ嬢タクシー運転手に”カスハラ体験”聞いたら壮絶すぎた…人はどこまでカスになるのか 「対策3か条」とは?(乗りものニュース)

元キャバ嬢タクシー運転手に"カスハラ体験"聞いたら壮絶すぎた…Yahoo記事スクショ

この記事によると、直近2年間でタクシードライバーの58%が迷惑行為(カスタマーハラスメント)を受けたと答えているそうです。

そして村瀬さんによると、カスハラで多いのは次の3つの行為だそうです。

  1. 不退去
  2. 法令違反の強要
  3. 暴言

また交通労協の調査 2  によると、タクシー運転手の「最も印象に残っている迷惑行為」上位3位は次の通りです。

  1. 暴言
  2. 威嚇・脅迫
  3. 権威的(説教)態度

悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査 最も印象に残っている迷惑行為

運送約款の改定

2016年から運送約款にハラスメントについての項目が追記されるようになりました。この変更には次のような強い意志と主張が含まれていました。

  1. 多様化するタクシーの品質を維持し向上させるためには「安心安全な職場環境」が不可欠である。
  2. 広く社会に「運送約款」の変更を周知し、モラハラ・セクハラ行為の違法性や悪質性を訴える。
  3. それにより、我々の社会からそれら行為の根絶を図り、住みよい社会の一助になることによって、より安心安全便利な公共交通機関の実現を目指す。

そして、約款に「ハラスメント行為があったら、その中止を求め、旅客がこの求めに応じない場合は、運送の引き受けまたは継続を拒絶する」という文言が追記されました。

変更から6年が過ぎ、タクシー業界は安心安全な職場になったのでしょうか?そしてハラスメントはなくなり、安全便利な公共交通機関になったのでしょうか?

残念ながら、なっていないようです。それどころか、カスタマーハラスメントは増え、問題化されています。さらに、運転手への暴行事件も後を絶ちません。

なぜハラスメントはなくならなかったのか?

運送約款改定の効果がなかった

つまり、運送約款に追記した効果がなかった/ない、ということです。タクシー利用者が運送約款を読むことがあるのでしょうか?

実は、約款変更にあたって特に問題視されたたことがありました。それは、運転手の判断の正当性を誰がジャッジするのか、でした。結局、マニュアルを作り、車内マイクを利用して管理者が判断するということになりました。

しかし、運送約款を変更するだけの事業者も多かったはずです。どのように対処するかを検討しマニュアル化したタクシー事業者がどれほどあったのでしょうか?つまり、実効性が乏しかったのです。

単独・密室という職場環境

それ以前に、問題の本質は別のところにあります。

  1. 単独業務である。
  2. タクシー車内という密室である。
  3. タクシー運転手が自ら判断し対応し処理をする。
  4. 運転手任せになっている。
  5. 助けてくれる人がいない。

これら問題は「事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねている」というタクシーの特質そのものなのです。

そして、このことは交通労協の調査 3 「迷惑行為を受けた場所」にタクシーの特徴として出現しています。それは、72%を占める(カスハラを受けた場所が)「他の利用者がいない職場内」という結果です。

これがタクシー運転手が受けるハラスメントの特徴です。タクシーという密室で、後ろから、運転をしている無防備状態の中、助けてくれる人もいないひとりで、我慢や恐怖を強いられるのです。この恐怖心が利用者への警戒心につながります。その恐怖心と警戒心が言葉や態度に表れると、クレームやハラスメントに発展します。これもまたタクシーの特徴だと言えるかもしれません。

迷惑行為を受けた場所 カスハラ調査

タクシーの悲劇

つまり、改善するにはタクシーを否定しなければなりません。このタクシー運転手の労働環境の危険性に加え、管理され指示されることに慣れている人には、非常に窮屈に感じられます。そして狭い車内という空間で強い圧力となってボクたちを押しつぶそうとします。その状況で、何も言えなくなるのです。あるいは、逆上してしまうのです。

運送約款の変更ぐらいでは、なくならなかったのです。そしてなくならないのです。

カスハラへの対策

いくつか対策を、実際に行われていることを含めて考えてみました。

1.事前確定運賃

ハラスメントの地理経路・運賃に由来するものについては、アプリ内での支払いと経路の確定する事前確定運賃での運行が有効でしょう。さらに乗り逃げもなくなります。

2.客席と運転手席の完全分離された車両の使用。

利用者からの接触や暴行がなくなります。

3.車内監視システムの導入による密室と単独の回避

実車ボタンに連動してカメラが作動、送信します。運転手の合図、またはある一定の言葉(ハラスメントワード)に反応して観察を開始、声掛け呼びかけを行います。密室性の回避することで利用者をけん制します。

要するに、実効性のある対策は、自動車のASVやADASと同じように、タクシー車両の運転手支援システムを推し進めることなのです。

4.不寛容社会からの脱却

このことは後述します。

STOP カスタマーハラスメント ポスター

社内でハラあかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-

離職と運転手不足の原因

運賃を上げ、賃金が上がったとしても、人手不足は解消されません。タクシー業界の一番の課題は、安全で安心して働ける職場環境なのです。それでなくても、事故のリスクはつきまといます。さらに、早く死ぬ職業でもあります。

そして利用者からのハラスメントが加わり、それをひとりで対応処理しなけらばなりません。

この環境が好きだなんて人はいないでしょう。ボクもですが、しかたなく、とか、トレードオフとして人間関係が希薄そうだから、なんてことで入職するのでしょう。そしてどこか良いところがあれば離職する。そんなパターンです。そういう人を多く見てきました。

不寛容と社会的コスト

確かに利用者の安全と安心、利便性も重要な課題です。しかし、それを提供する側の安全と安心が担保されない限り、人材不足による供給不足は解消されません。

いえ、その前に、利用者からのハラスメントによりボクたちの職場環境が悪化しているとするならば、実は供給不足もしかたないことなのです。結局、困るのは利用者というボクたちになります。

ボクたちの不寛容さが、社会的コストを押し上げている、ということです。結局、ハラスメントやいじめ、暴力は、ブーメランとなってボクたちの社会を荒廃させるということです。

そのことを、ボクたちが利用者になったときにも、考えなければならないと、そう考えながら、まとまりのない文章を最後まで読んでいただいた寛容さに感謝しなければならないなあ、そう思っています。ありがとうございます。

タクシーハラスメント
運転手不足で考えたこと
地方タクシーの現状と問題点

  1. さちゃたく(@sachantaxi33ojo)さん / Twitter
  2. 全日本交通運輸産業労働組合協議会 悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査
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