日本交通の新卒乗務員300人について考えたこと
日本交通の新卒乗務員300人の入社内定のニュースを見ながら、ボクたちに足りないものは、loyalty(ロイヤリティ)かもしれない。そう考えていた。
だって「渡り」なんてジャーゴンがあるぐらい、同業他社への転職が多い業界だし、それも3年ごと繰り返していたり、出来高給の歩率の多寡がその転職の理由だったり、そんな姿を見たり話を聞いていると、愛社精神が希薄だ、と思ったりする。
新卒乗務員300人


日本交通の「2023年入社予定の新卒乗務員 内定式を開催」というニュース。
このニュースに関して、Twitterでの反応はというと、現役のタクシー運転手の方たちは、「どうして新卒で」とか「何人残るか」なんて、どちらかというと否定的な意見が多い。
離職率
新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率はというと、1年ごとに10%で、3年で30%程度になっている。(図1)
図1 新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率1
次に産業別で見てみると、運輸業では就職後3年以内の離職率が約25%。生活関連サービス業・娯楽業では46%、宿泊業、飲食サービス業では50%を超えている。(図2)
ただ、タクシーは旅客自動車運送事業で、運輸業というよりもサービス業の色合いが濃い(でも実態はサービス業だよなあ)。そのことを考慮すると、タクシー単体だともう少し高い(40%〜50%なのかもしれないなあ)と推測している。
図2 新規大卒就職者の産業別就職後3年以内の離職率2
離職率が高い理由
サービス業の離職率の高さを考えると、タクシーという業種が悪いのではなく、利用者が悪い?
つまり、お客様は神様で、その神様の態度が傲岸不遜だからで、その接客による過度のストレスから離職が多くなる。
それだけではなく、車内での嘔吐、乗り逃げ、暴行…。もうね、聞いただけでも辞めたくなる…?それも1対1、ドアツードアというマンツーマン。中にいるボクだって逃げ出したくなるぐらいの職場環境。
それをどうすることもできないで、ただ我慢している。
我慢、というよりも、やり過ごしている。解決しようとしないで、ただ見過ごしている。そう言った業界の風土。
事故だってそうだ。運や技術や体調という個人的なものに置き換えては、ただ傍観している。これも、タクシーという業種が悪いのではなく、道路や自動車そのもの、そして長時間労働に歩合制賃金、制度と設備が悪いのだ。
救い主が現れるまで
だから、ボクたちは救世主を待ち望んでいるのだ。この劣悪な職場環境を根本から変えようとする若さを。事故や事件のない安心安全な職場環境を創造する頭脳を。タクシー業界で働く人たち全てに幸福をもたらす力を。
きっと、若い人たちの中から現れるはずだ。そう思っている。新しい人たちの中から現れるはずだ。そう確信している。
タクシーに未来はあるか
ボクたちに足りないものは、loyalty(ロイヤリティ)なのだ。
ボクたちに足りないものは、愛社精神、職業愛。そして地元愛なのだ。
タクシー業界に必要なのは、その愛を携え未来を考える人たちなのだ。
だから、新卒のあなたたちを必要としているのだ。タクシーの全てを、今ある概念を剥ぎ取り、人々が驚く仕組みを、若い人たちの知恵と力と勇気と夢と、そして愛を持って、築いてほしいと、思っている、いえ、願っている。
タクシーに未来はあるはずです。ぼちぼち安全第一で、その未来を切り拓いてほしいなあ、なんて思っています。
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